「転勤はイヤ、配属ガチャもイヤ」――若手の待遇改善のウラで失われるもの:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
若年層が昭和的な人事制度に「ノー」を突き付けるアンケート結果が明らかになりました。電通の調査によると「転勤はイヤ」「希望通りの配属先を確約してほしい」とする就活生は双方約9割にのぼります。若手社員の待遇が改善され「あれもイヤ、これもイヤ」と言える環境になった背後で、失われているものもあります。それはどんなものかというと……。
「転勤はイヤ、配属も希望通り以外はイヤ」――。
電通の採用ブランディングエキスパートチームが実施した調査で、就活生が真っ向から昭和的な人事に「ノー!」を突きつける“イヤイヤ結果”が明らかになりました(電通「Z世代就活生 まるわかり調査 2024」)。
ご覧の通り「あなたは入社後の勤務場所・エリアを確約してほしいと思いますか?」との質問に、88.8%が「はい(とてもそう思う・まあそう思う)」と答え、「あなたは入社後の職種・配属先を確約してほしいと思いますか?」との問いに対しても、87.3%が「はい(とてもそう思う・まあそう思う)」と答え、双方「いいえ」を圧倒しています。
数年前から、転勤をハラスメントと批判し、「配属ガチャ」なる新しいい言葉も生まれましたが、ほとんどの就活生が「ノー!」とは。……衝撃的、と言わざるを得ません。
「好きなことを仕事にしよう!」と言われてきたのに……
むろん誰だって自分の希望通りがいいし、誰だって、自分の能力を発揮したい。「こっちだっていろいろな都合があるんだから、予定を勝手に変えないでくれよ」という気持ちは分かります。これまで会社員が決して手にできなかった「ノー」と言える権利を、今の若手社員は手にしているのですから、「現状を変えたくない」という人間の自然の摂理に従う方が楽に決まっています。
おまけに大学で行われているキャリア教育といったら「好きなことを仕事にしよう!」「得意なことを見つけよう!」を合言葉に、めったやたら自己分析やら他己分析やら、適正診断やらなんやらと「自分を知る」作業を徹底させ、「自分の能力を最大限に発揮できそうな」キャリアをデザインさせることを目的としているのです。
ですから、会社側の都合で人事異動されては「なんでやねん!」とがっかりして当然でしょう。
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