AI時代の「生き残りスキル」 子どもの教育にまで影響?:グッドパッチとUXの話をしようか(2/2 ページ)
AI時代における「生き残りスキル」については、さまざまな分野で語られています。その影響は、小中学生の教育にまで及んでいるように感じます。一緒に考えてみましょう。
AI時代、子どもにも求められる「生き残りスキル」の習得
AIの進化が止まらない昨今、「AIに奪われる仕事/奪われない仕事」をテーマにしたコンテンツが注目されるなど、どんなスキルを身に付ければよいかというテーマは大人にも子どもにも等しく突きつけられています。
AI活用が特に浸透している分野として、外国語翻訳が挙げられます。
現時点ですでに精度の高い翻訳や文章生成が可能になっており、外国語教育の場では、大量の英単語を詰め込んで覚えたり、構文や文法を必死に勉強したりする必要はないといわれ始めています。
大学によっては、英語の読み書き力よりも英会話の能力を測るために、CEFRやTOEICなどの民間試験で代用できるようにしているところもあるようです。
AIは人間のように、話し方の特徴から人間性を捉え信頼関係につなげたり、小さなジョークに対して同時に笑ったりする力を現時点では持ち合わせていません。言語の壁を超えて異なる考え方を持つ人の意見を聞き、相手の話に共感することや、それを踏まえて自分の主張を伝えることは人間ならではの得意分野であり、磨き続ける必要があります。言語にかかわらず、円滑なコミュニケーション力が求められているともいえるでしょう。
また、生成AIの進化により多様なサービスやコンテンツを生み出すスピードが飛躍的に加速しています。企業が展開する新たなサービスやプロダクトだけでなく、個人のクリエイターが発信するコンテンツも含め、新しいものがどんどん当たり前になっていく世の中で、どういった力や経験が求められるでしょうか。
まず挙げられるのは、新しいもの自体に興味を持ち、変化を楽しむ力です。次々と生まれる新たな流行に対し、うっかり「どうせすぐに廃れるんだから」と否定的な意見を言っていませんか?
「元来、人間は大きな変化を嫌う生き物である」というのは有名な話です。
人間には「恒常性ホルモン」が存在し、寒い場所に行けば、36度台の体温を保つために無意識のうちに体を震わせて体温を上げようと反応します。逆に、運動をして体温が上がれば、それを下げるために汗を出して体温をコントロールしようとします。季節の変わり目に風邪を引きやすかったり、結婚や出産、昇進といった嬉しいできごとであっても大きな変化によって体調を崩しやすくなったりするのも、この恒常性ホルモンによるものだと考えられています。
例えば、iPhoneのブラウザアプリSafariを思い出してみましょう。それまで画面最上部にあったURL入力欄が最下部に移動し、使い慣れていた状態から変化したとき「何でこんな改悪を!」と思った記憶はありませんか? こういった変化も「悪いもの」と捉えるのではなく、何でそうしたのだろう? と考えてみることが変化へ順応する第一歩になるでしょう。
大人が新しいものを発見することに敏感になり、子どもに「これ知ってる?」と問いかけてみたり、「そんなものがあるんだ」と関心を示してみたりなど、ちょっとした会話をすることで、子どもも新しい変化に興味を示すようになります。家庭でのちょっとした会話が子どもの興味関心のアンテナを広げる第一歩になるかもしれせん。
そして、自分の好きな物事をとことん突き詰め、他の誰よりも詳しくなる経験も、ますます重要になっていくともいわれています。
1つのことを突き詰めた自信は、不確実な世の中で変化に左右されない軸を持つことにつながります。ゲームでも遊びでも「とことんやり込みたい」と感じるものを見つけることが大事ですし、今はなくてもなかなか見つからないと焦らず、いろいろなものごとに触れるきっかけをつくることを意識してみるとよいでしょう。
小さな変化を楽しむ
一方で、ずっと同じ状態が続いてしまうと飽きてしまい、新しいものや刺激を求めるのもまた人間の本能。以前この連載でも紹介しましたが、人間が嫌うのは「大きな」変化であり、少しずつ変化していくことはむしろ好まれるようです。
ここ最近のAIによる進化は、今後起こるであろう進化に比べれば「小さい」変化なのかもしれません。大事なのは、起こる変化の幅が大きくなっていることを受け入れ、その変化とどう付き合っていくか、自分の取るべき行動をその都度、臨機応変に考えられる力なのではないでしょうか。
偉そうに未来の生き方を語ってしまいましたが、この考え方に新しさは全くありません。ただ先人の教えから思ったことを書いているだけです。進化の父、ダーウィンはこう残しています。「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもなく、環境の変化に最も敏感に対応できる種なのです」
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