JR東日本「みどりの窓口削減凍結」に、改めて思うこと:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
JR東日本は5月8日、定例社長会見で「みどりの窓口の削減方針を凍結する」とした。3年前の440から209まで減らしており、2025年までに70%程度に減らす方針だった。しかし混雑解消には、凍結ではなく増やす必要がある。オンライン予約とチケットレスは便利だが、改めて思うことがある。
2024年5月7日、JRグループの旅客会社は大型連休(4月26日〜5月6日)の新幹線と特急の利用状況を発表した。NHKニュースがまとめたところ、前年同期に比べて102%の微増、新型コロナの感染拡大前の2018年と比べると95%の回復となった。
2020年は大幅な減便があって、それでも乗車率0%の列車があったとか、プラットホームに行列がないなどと報じられていた。それから4年、ようやく列車や駅ににぎわいが戻ったようだ。
需要が回復した副作用として、大型連休前にみどりの窓口などJRのきっぷ売り場は大混雑となった。今年の「みどりの窓口」の大混雑の理由は、鉄道旅行需要がコロナ禍以前のレベルまで回復した一方で、みどりの窓口が激減しているからだ。JR東日本では2021年5月時点で440あったみどりの窓口が、現在は209になった。そりゃ混むわけだ。私が2023年11月の本連載で指摘したように、駅の窓口廃止を急ぎすぎた。
【関連記事】利用されない指定席券売機 やっぱり「駅の窓口廃止」は間違っている(2023年11月10日の本連載)
みどりの窓口がなくても「指定席券売機」「多機能券売機」「話せる券売機」があるというけれど、利用者はまだインターネット予約や指定席券売機に慣れていない。各券売機のインターフェースも不親切だ。技術者の先走りで、利用者目線が足りない。
JR東日本は大型連休直前の4月26日、「JR東日本グループカスタマーハラスメントに対する方針」を策定したと発表した。まるで窓口の混雑とクレームを見越して先手を打ったようなタイミングではないか。
そんな論調で話を進めようとしたら、JR東日本は5月8日の定例社長会見で「みどりの窓口の削減方針を凍結する」と明らかにした。「お客さまにご迷惑をおかけした」と謝罪の言葉もあったという。NHKによると「3年前に440だったみどりの窓口を209まで減らしたけれども、これを維持する」という。もともと2025年までに70%、約140駅まで減らす方針だった。これだけ減らしてまだ減らすつもりだった。
ひとまず凍結して良かった。しかし凍結だけでは今まで通り。大混雑を解消するなら、むしろ増やさなくてはいけない。すでに廃止したみどりの窓口のうち、今も設備が残る10数カ所を臨時窓口とするという。無線端末などを駆使して、臨時窓口を増やす工夫も必要だ。
確かにオンライン予約とチケットレスはとても便利だ。ただし、まだ窓口の役割は終わっていない。私はどちらも経験して、改めて思うことがある。
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