JR東日本「みどりの窓口削減凍結」に、改めて思うこと:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
JR東日本は5月8日、定例社長会見で「みどりの窓口の削減方針を凍結する」とした。3年前の440から209まで減らしており、2025年までに70%程度に減らす方針だった。しかし混雑解消には、凍結ではなく増やす必要がある。オンライン予約とチケットレスは便利だが、改めて思うことがある。
しかし、首をかしげる仕様はまだある
<事例4>
2023年8月、出雲市駅から木次線で備後落合駅へ向かった。出雲市駅から備後落合駅までは券売機できっぷを買った。そこまでは良いとして、備後落合駅は無人駅だから帰りのきっぷを買えない。だから私は、あらかじめ出雲市駅の指定席券売機で「備後落合駅から木次駅まで」のきっぷを買おうとした。しかし買えない。みどりの窓口なら買えるはずだけど、観光拠点のはずの出雲市駅にはみどりの窓口がない。
どうやらその指定席券売機は「その駅を発着する乗車券」しか買えない仕様らしい。キセル防止なのか転売防止なのか、何か理由があるのだろう。しかし現実に必要なきっぷを買えない状態だ。結局、私はどうしたのか。きっぷなしで備後落合駅から折り返した。車内で乗車整理券を取った。ワンマン運転の運転士さんの手を煩(わずら)わせるより、木次駅で精算しようと考えた。
ところが、16時49分に木次駅に着いてみると、約1時間前の15時45分で窓口は終了。係員は不在だ。私は木次駅からタクシーで出雲空港へ向かうつもりだったから、ここで精算できないと無賃乗車になってしまう。困って、駅の隣にある雲南市観光案内所で相談したところ、「きっぷ販売機で木次駅から備後落合駅までのきっぷを買って、きっぷ回収箱に入れてはどうか」と提案された。きっぷと乗車が逆方向になってしまうけれども、帳尻が合うからいいのかなと思い、そうした。
木次駅は2024年3月に「みどりの券売機プラス」を設置した。現在はオペレーターに相談できるようになっている。しかし対処が逆だ。窓口の営業時間縮小と同じタイミングで設置してほしかった。お客さまから代金をいただく窓口に空白期間をつくる。商売としてありえない。
<事例5>
2024年2月、JR北海道の網走駅から「流氷物語号」で知床斜里駅へ向かった。指定席券は道内の友人が手配してくれた。このほかに乗車券が必要だ。交通系ICカードに対応していない区間だからきっぷを買う。クレジットカード対応の指定席券売機があった。最初の画面に「知床斜里」という項目がある。これは助かる。いきなり「指定席」「自由席」の選択にならない。使用頻度の高い目的地の駅を最前面に表示する。良いことだ。
しかし「知床斜里」を選択して支払う手順になるとクレジットカードを受け付けない。物理的にフタをされて差し込めない。クレジットカード対応と明示しているのに買えない。焦って2度3度とやってみるけどダメだ。そこに友人がやって来て「クレジットカードで支払うときは、乗り換え検索で目的地を選ばないとダメなんです。私も先日知りました」という。乗り換え検索で知床斜里駅を指定すると、クレジットカードで決済できた。
きっぷをクレジットカードで買うだけで、なぜ裏ワザのような手順が必要になるのか。「こんなに面倒なら、もう次からはクルマで行きましょうか」と言ったところ、失笑された。取材目的は列車だから、これはまさに笑えないジョークだ。しかし、用向きで知床斜里駅に向かう人々は本当にそう思うかもしれない。
移動手段としてクルマは圧倒的に便利で、鉄道は基本的にクルマより面倒な手段だ。だからこそ、少しでも面倒を減らし、乗っていただく工夫が必要ではないか。
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