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ラーメン業界の革命児「一蘭」幹部に聞く 最高益をたたき出した「3つの要因」地域経済の底力(1/2 ページ)

一蘭ホールディングスの事業統括責任者に過去最高益をたたき出した理由を聞いた。3つの要因はインバウンド、物販、そして店舗システムだ。

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 ある平日の午後、福岡市・中洲にあるラーメン店「一蘭本社総本店」を訪れた。ランチタイムはとうに過ぎているが、店の前には人だかりができている。スタッフが手慣れた様子で行列を整理する。

 これは本店に限った話ではない。東京の渋谷や新宿などの店舗でも似たような光景が見られる。一蘭のある社員は、気軽に自分の店へラーメンを食べに行けないのが残念だと苦笑する。ほぼ全ての飲食店がコロナ禍で苦しんだわけだが、ここにはその“後遺症”は微塵もなかった。

 「コロナ禍からの戻りが想像以上に早くて。特にインバウンドの伸びがすさまじい」

 こう話すのは、一蘭ホールディングスで事業統括責任者の立場にある山田紀彰氏。表情からうかがえる自信はきちんと数字にも表れている。2023年度の売上高は過去最高の355億6000万円を記録。2019年度は288億円だったため、コロナ禍前の水準に戻るどころか、一気に追い抜いてしまった。

 一蘭はなぜ業績をあっさりと回復できたのか。その背景にはコロナ禍での仕込みがあり、一蘭ならではの強みが大いに生きたのだった。


一蘭ホールディングスの山田紀彰氏(筆者撮影)

コロナ禍前後で外国人の客層に変化あり

 過去最高益をたたき出した理由。取材を通じて、主に3つの要因に集約されることが分かった。インバウンド、物販、そして店舗システムである。

 1つ目はインバウンド需要の取り込みだ。海外観光客自体はコロナ禍前から多かった。ただ、その内訳は様変わりしている。山田氏によると2019年までは中国人観光客が大挙をなしてきて、特に大阪の店舗はあふれ返っていた。その後、コロナ禍でインバウンドはゼロに。2022年ごろから再び増え始めると、韓国人が大半を占めるようになった。


福岡市博多区中洲の「一蘭本社総本店」

 これには理由がある。一つは韓国と福岡の距離の近さ。加えて、BTSやSEVENTEENといったK-POPグループのメンバーが来店して、その様子をSNSに投稿した。それによって人気が加速した。

 一蘭が仕込んだわけでもなく、あくまでも偶然の産物ではあったが、韓国人が急増している状況を受けて、いっそう海外顧客の細かな要望に応えるシステムの強化を進めている。

 なお、実は一蘭の外国人対応は今に始まったことではなく、20年ほど前から外国語のメニューや、オーダー用紙の多言語化に取り組んでいた。そのため、非常に入りやすいラーメン店として外国人の間でも知られた存在であった。


中国語および韓国語のオーダー用紙(提供:一蘭)

1000万食以上も売れているカップ麺

 2つ目は物販が好調であること。コロナ禍で仕込んだ取り組みが花開いた形となった。その代表例がカップ麺「一蘭 とんこつ」。コロナ禍で外食が難しい中、自宅でも一蘭の味が食べられるようにと、2021年2月に発売。現在までに1000万食以上を売り上げる。通販だけでなく店舗で土産として購入する客も多いそうだ。

 実は、この商品は構想から発売まで数年かかっている。

 「いろいろなラーメン店がメーカーとコラボしてカップ麺を出していますが、われわれはコンビニからの打診を何度もお断りしました。研究開発に時間をかけ、相当こだわって自社で作りました」


「一蘭 とんこつ」(提供:一蘭)

 最終的に具のないラーメンが誕生。それでいて価格は約500円ということで話題を呼んだ。ただ、その強気の理由は味に絶対的な自信があるからだ。オリジナルの麺とスープに加えて、最大の売りは赤色の「秘伝のたれ」。これは社内でも4人しかレシピを知らないという門外不出の調味料。これも商品に組み込んだ。

 なお、物販については、家庭用の即席ラーメンなどを以前から販売しており、海外にも積極的に販路を広げている。例えば、豚肉を忌避するイスラム教徒が9割を占めるインドネシアでは「100%とんこつ不使用ラーメン」が人気を博している。こうした海外での物販も同社の売り上げを下支えしている。

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