ラーメン業界の革命児「一蘭」幹部に聞く 最高益をたたき出した「3つの要因」:地域経済の底力(2/2 ページ)
一蘭ホールディングスの事業統括責任者に過去最高益をたたき出した理由を聞いた。3つの要因はインバウンド、物販、そして店舗システムだ。
「密にならない」と話題に
最後は、期せずして効果を発揮した店舗のシステムだ。具体的には「味集中カウンター」である。いわゆる自習室のように、客のテーブルの左右に仕切り板があって、周囲の目が気にならないプライベート空間になった席のこと。これは一蘭の店の名物としてよく知られている。
この独自のシステムが、コロナ禍では「密にならない」として注目を集めた。「一蘭=安心な店」という認識が消費者に広まり、特にロードサイドの店はコロナ禍の真っただ中でもファミリー層が数多く訪れた。繁華街の店舗が苦しむ中でも、これらの店舗では売り上げを大きく落とすことがなかったという。
余談だが、この味集中カウンターは女性客を増やす要因にもなっている。同社によると、一般的なラーメン店における女性客の割合は15%ほどであるのに対し、一蘭は40%に迫る。人目を気にせずにお代わりできる点などが支持されているのだという。
東南アジア市場などの開拓に注力
過去最高を更新した一蘭。さらなる売り上げアップに向けて何に取り組むのか。
コロナ禍が明けた今、海外への周知をさらに拡大する計画だ。現在は米国に3店舗、香港に3店舗、台湾に2店舗を構えている。新たに周知を狙うエリアとして、マレーシアやインドネシアといった東南アジアを見据える。
「また、物販に関してはオーストラリアやカナダなど(欧米圏)にも既に広がっています。今後も引き続き強化して、ラーメン文化を伝えていきたいです」
取材した日の夜11時ごろ、再び総本店の前を通りかかった。暗がりの中でも20人ほどが列をなしていた。若い外国人もいた。この熱気を見るに、まだまだ一蘭の好調ぶりが止まることはないだろう。
著者プロフィール
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
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