AI導入を成功させるには? 不二家とリンガーハットの事例から学ぶ:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/2 ページ)
企業のDX推進に、AIは欠かせない。立ちはだかるのは「導入」と「定着」の壁だ。事例から、成功の秘訣(ひけつ)を探る。
連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線
小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。
もはや企業において、AIなしに効果的なDXは実現できません。
例えば、AIを活用することで顧客の行動パターンを解析してパーソナライズしたサービスを提供したり、業務プロセスを最適化したコスト削減が可能です。
また、非効率的なプロセスを自動化または半自動化し、従業員がより価値の高い業務に集中できるようにもできます。その結果として、新しいビジネスモデルの構築や意思決定の仕組みを作り出すことにもつなげられます。
このように、業務の各所でAIを活用することで、企業におけるDXを効果的に推進できるのです。今回は、AIをDXの中心の戦略に置いて成功した事例をご紹介するとともに、その秘訣(ひけつ)をお話ししたいと思います。
不二家は「勘・経験」からどう脱却したか?
まずは、大手菓子メーカーである不二家の事例をご紹介します。
不二家には「カントリーマアム」などの菓子を量販店に販売する製菓事業と、店頭でケーキなど生菓子を扱う洋菓子事業があります。堅調な製菓事業に対し、洋菓子事業では10年以上赤字が続いていました。そこで不二家は、赤字の洋菓子事業にAIを導入し、立て直しを図ることにしたのです。
まず、2000種類に上る商品の、店舗ごとの発注量や販売動向、顧客の属性などのデータを整理しました。加えて、生菓子の材料や配合、天気など多岐にわたるデータをAIに解析させることで、「特定の商品がどのような条件で、どの店舗で売れているのか」という詳細な需要傾向を予測するAIを開発しました。
これにより、これまで人の感覚で発注していたことによる無駄を削減し、生産コストを最適化できたほか、食品ロスも減らせました。この需要予測は正確な出荷予測にもつながるため、工場のライン編成や人員配置の最適化も可能となります。
「需要予測」という勘や経験に頼っていた領域を自動化し、業務プロセスの改善や最適化につなげられることが、AI導入の大きな強みです。
AI導入の効果は、業務の効率化や自動化だけにとどまりません。データを蓄積していくことで将来、データドリブンな戦略の意思決定につなげることもできます。つまり、AIの導入は、今後のさらなるDXを推進する上で重要な礎となるのです。
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