クルマの価格はまだまだ上がる? ならば海外格安EVにどう対抗すべきか:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
クルマの価格が高くなったという声をよく聞く。昔と比べて装備が充実していることもあり、価格は上がった。今後も、電動化やソフトウェアの高度化など、価格が上がる要素ばかりだ。安価な中国製EVなどに負けないためにも、真の価値を打ち出していくことが必要だ。
クルマが高いとユーザーも得になる?
クルマの価格が高い方が売りやすい、という状況も生まれている。それは残存価格が高くなるため、下取りや残価設定ローンなどで有利な条件を提示しやすいからだ。
トヨタの「アルファード/ヴェルファイア」が人気なのは、残価設定ローンを利用して購入する層が多いから、というのが理由の一つだ。大きくて高級なミニバンを少ない出費で(と本人たちは思っているが、金利負担はなかなかのものだ)乗り回せることから、残価設定ローンを利用する。
その結果、ローンの最終回にそのクルマをディーラーに返却して、再び新型のアルファードを残価設定ローンで購入するユーザーをたくさん育てているのである。これはユーザーを囲い込めるだけでなく、良質な中古車を確保するためにも役立つ戦略だ。
トヨタのアルファードはヴェルファイアに加えてレクサス「LM」も登場し三兄弟になった。かつてのマークIIにイメージが重なるが、LMはアル/ヴェルよりもワンランク高額な高級車だけに、特別感を演出して差別化を図っている
しかも前述した通り、クルマの生産コストは上昇こそすれ、下がる要素は少ない。超小型モビリティを自動車メーカーやサプライヤーなどが続々リリースすれば、低価格車両がそろうことになるが、それは望み薄といった印象だ。
超小型モビリティは法規制の複雑さから、ベンチャーや中小のサプライヤーでは原付ミニカーとして販売する計画が多い。しかし原付ミニカーでは2人乗車ができない上に、モーターの出力も0.6キロワットに制限されることから、登坂能力や積載能力に限度がある。
高齢ドライバーの安全対策や低炭素社会のために効果的なモビリティだと思うが、正直もうかるビジネスに成長するかは疑問だ。それだけにどこも手を出しにくい状況で、今やより手軽な特定原付の方に軸足が移っている状態だ。
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