雑貨市場のZARA? 2年で1.9倍に急成長した「3COINS」が実践する売れる仕組みとは(2/3 ページ)
「3COINS」は300円商品を中心にデザイン性の高い生活雑貨やインテリアを取りそろえるブランドで、20〜30代の女性を中心に人気を博しており、売上高も直近2年で1.9倍と急成長しています。ただ、雑貨自体は業態としては昔から存在しており、無印良品やダイソーが展開するStandard Productsなどの競合が存在しています。この競争の激しい雑貨市場でなぜ3COINSが急成長できたのか、その売る仕組みについて分析していこうと思います。
ファッション屋が作る雑貨 独自の「売れる仕組み」
同社の成長を実現している仕組みは大きく3つで、そのほどんどが祖業のアパレル事業から持ち込まれたものになります。
(1)絶え間ない新商品の投入で売り場の鮮度を高める
競合の「無印」がベーシックな定番商品を展開する「ユニクロ」だとすると、「3COINS」は「ZARA」のようなアプローチをとっています。
同社の1店舗あたりの商品数はおおよそ1600〜2000とのことですが、4週MDと称し4週のサイクルで700〜800もの新商品を投入し、週単位で売り場を変化させ、2カ月程度でほぼ全ての商品が入れ替わるそうです。これにより、顧客がいつ店を訪れても常に新しいものが並んでいるフレッシュな売り場を作り続け、顧客の来店頻度を高めています。
これを実現するために、自社で商品の生産を行う製販一体のSPAモデルを取っており、これが企画→生産→販売までの高速サイクルを支える仕組みとして機能し、このような絶え間ない商品供給が実現されています。また、商品のマンネリ化を抑えるために、ブランドのコアターゲットに人気のブランドとも頻繁にコラボしているようです。
(2)初回生産量を抑え在庫リスクを低減
毎月700〜800もの絶え間ない新商品の投入は驚異的ですが、需要を読み違えた際に新商品が在庫として積みあがり、不良在庫として同社の利益を圧迫するリスクが存在します。
この課題に対しても同社はZARAのようなアプローチをとっており、新商品の初回生産は1カ月分に抑え在庫リスクを避け、売れ筋商品のみ再生産をかけているそうです。これにより、不良在庫が発生しにくく在庫回転率や利益率が高められる他、在庫処分のための値引きセールを行う必要がないため、さらに利益率を高めています。
売れ筋の商品を買い逃した顧客は2カ月ほど待つことになるため、最近では新商品が出る月曜日に顧客が買い逃すまいと来店し、一般に売り上げが伸びる週末よりも来店数が多くなるそうです。在庫として積みあがるリスクよりも、人気商品が売れない機会損失リスクを取りに行っている点も、在庫処理が業界のイシューであるアパレル企業感を感じます。
(3)広告費をかけることなくSNSで拡散
周りの購買行動を観察していると、情報収集はTikTokとInstagramで行い、バズっている商品の購買に至るという消費行動がかなり一般的になっていることを感じます。女性がメインターゲットの「3COINS」も例に漏れず、SNSを活用し顧客へ情報発信を行っていますが、同社は広告費を一切かけることなくSNS上での拡散に成功しています。
SNSで話題になるたびにテレビでも取り上げられ2021年は上半期だけで90回も取り上げられているそうで、これがさらにSNSで拡散されるという好循環を産んでいます。このような再現性の高いバズをどのように同社は生み出しているのでしょうか?
その秘密は公式の企業アカウントに加え、自社スタッフをインフルエンサー化し情報を拡散させているところに特徴があります。数えてみたところ、SNSで発信を行うスタッフアカウントは70アカウント以上存在し、TikTokとInstagramでの総フォロワー数は100万人を超えています。
このスタッフアカウント経由でSNSで拡散され、それを起点に外部のインフルエンサーにも取り上げられることで、さらなる拡散や顧客の購買につながっているようです。
同社には「スタッフインフルエンサー」というフォロワー数や自分の投稿から購買につながった金額をもとに、基本給にプラスしてインセンティブをもらえる制度が存在しています。これもSNS発信のインセンティブを高め、再現性高くSNS上の拡散を産む仕掛けとして機能していると考えられます。
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