連載
「黒づくめの組織」が起爆剤に? 『名探偵コナン』の映画がヒットし続けるワケ:エンタメ×ビジネスを科学する(2/4 ページ)
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の勢いがすさまじい。だが、興行収入が大台を突破する理由は、コンテンツの魅力だけでは説明しきれない。
「恒例化」したプロモーションで、離脱したファンを取り込む
2021年に開始した新たな試みは、総集編映画の製作と、映画公開に向けてファンの関心を盛り上げるための取り組みを「恒例化」したことである。従来より映画公開直前に行われていた、その年の映画でスポットを浴びるキャラクターに関する特別番組を、テレビシリーズの総集編映画として年始に公開するようになった。
総集編の映画化自体は他のアニメ作品でも行われているが、『名探偵コナン』では独自の要素を組み合わせ、この手法を恒例化・パターン化している点に新規性がある。
具体的なスケジューリングは以下の通りである。映画のエピローグで次回作のスポットキャラクターを発表し、11月から12月にかけて映画タイトルとキービジュアルを公開する。1月には総集編映画を公開し、後に放送や配信も行う。3月後半から4月にかけては特別番組の放送や過去作品の再放送を実施し、4月中旬に本編の新作映画を公開するというパターンを恒例化している。
このサイクルにより、コアなファン層の期待を高めつつ、新規層やライト層、さらには一度離れていたリターン層も自然な形で映画への興味を持つようになる。前述した継続性と、毎年映画を放映できる体制・環境があってこそではあるが、ファンを維持し、新たに呼ぶという点で恒例化できている点は強みである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
コナン映画新作、興収135億円突破 3世代のファンを離さないコンテンツの“トリック”
劇場版名探偵コナンの人気が止まらない。ドラえもん、ポケモン、サザエさん……日本には長寿コンテンツがいくつかあるが、それらとの決定的な違いとは。
MAPPA単独『呪術廻戦』大成功の一方で……「製作委員会方式」は本当に悪なのか?
『呪術廻戦』が人気だ。同アニメの制作会社のMAPPA(東京都杉並区)が実行した「単独出資方式」に脚光が当たっている。これまで主流だった「製作委員会方式」とはどう違うのか? それぞれのメリット・デメリットは。
模倣品か、世紀の傑作か――「パルワールド」が熱狂を生むワケ
爆発的人気と議論の渦中にあるゲーム「パルワールド」。そもそもどんなゲームであり、なぜここまで話題になっているのか。
『原神』爆発的ヒットの要因は、「無課金勢」を見捨てない設計にある
スマホゲームに触れたことがあれば、まず知らない人はいないであろう中国発のゲーム『原神』。ここまで巨大なゲームコンテンツとなった要因を分析する。後編。
「アーマード・コア」10年ぶり新作が爆売れ “マニア向け”ゲームだったのに、なぜ?
フロムソフトウェアの「アーマード・コア」新作が好調だ。発売前からSNSで大いに話題となり、発売後初動の盛り上がりもすさまじい。なぜ、ここまでの盛り上がりを見せているのか。
