私鉄に「駅が多い」のは、なぜ? 小まめに乗客を集めている背景:鉄道の雑学(3/4 ページ)
都市部の私鉄はJRと比較して「駅が多い」といわれるが、なぜなのか。理由を探ってみると……。
私鉄の通る地域の歴史を考える
筆者は京王線沿線の調布市に住んでいる。旧甲州街道沿いにあり、この道路は現在の国道20号線とほぼ一致する。
江戸時代、甲州街道は「五街道」の1つで、主要道路として幕府に認定されていた。内藤新宿を出ると、下高井戸、上高井戸(この2つは1つとして扱われたことも多い)と宿場があり、その後国領、下布田、上布田、下石原、上石原の「布田五宿」と呼ばれる小さな宿場町を通る。その後、府中、日野と続く。
調布市在住者として、気になるのは布田五宿である。この宿場町は、ほぼ連続しているのだ。その上、このエリアには国領、布田、調布、西調布、飛田給と、短い駅間距離で駅が連続している。
布田駅と調布駅は歩いても10分程度の距離にあり、西調布駅からは飛田給駅のホームが見える状態である。「味の素スタジアム」でサッカーなどの試合がある場合には、帰宅客が同スタジアムから調布駅まで歩く姿をよく見る。
宿場があり、集落がある場所を通っているため、京王電鉄京王線、それも甲州街道沿いの区間は駅が多くなり、小まめに停車するのだ。
同様の事情は、京急電鉄にもある。京急電鉄の品川〜横浜間には、25もの駅がある。一方、東海道本線(京浜東北線含む)は、9駅。
だが、この間の宿場は品川、川崎、神奈川の3つしかない。しかし京急は、街道沿いで国道15号(旧東海道は現在ではこちらとなっている)を走っており、地域に人がそれなりにいる場所であれば駅をつくっている。
京王電鉄や京急電鉄の場合、そもそもある程度人の集まりがある場所に線路を敷いたので、このように駅をたくさんつくる必要があったという見方もできる。関西の阪神電気鉄道も旧山陽道に沿っており、もともと人が多くいた場所だ。同様の経緯で駅を多く設ける必要があったと考えていい。
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