自動運転「レベル4」実現への課題 地図情報「ゼンリン」責任者に聞く(2/2 ページ)
自動運転地図の方向性について、ゼンリンのモビリティ&スマートシティの事業を担当する古屋貴雄本部長に聞く。
組めるところとは協業 首都圏は年に1回「現地確認」
欧米や中国ではレベル4の自動運転が実現しているといわれている。だが実際には、まだ限定された地域での実施事例が多いという。自動運転地図でグローバル展開しているのは、いずれもオランダのHERE(ヒア)とTomTom(トムトム)といった伝統的な企業のほか、新たな参入も多い。
地図に関して大きな影響力を持つGoogle(グーグル)は以前、ゼンリンの地図データを採用していた。今はグーグル独自で地図データを整備している。
古屋氏は「地図情報の価値が上がったのは、グーグルの力が非常に大きいです。ゼンリンとは異なる形の地図作りをしており、潤沢なサービス基盤を持っています。ゼンリンは企業、業界を限定せず、組めるところがあれば組んで業界を盛り上げていきたいと考えています」と話す。協業する中でより良い地図を作っていきたい考えだ。
ゼンリンの代名詞でもある「住宅地図」は日本全国を網羅し、多くの分野で利用されている。首都圏など特に変化が激しい大都市部では、1年に1回、現地を目で点検して変化がないかどうかを確認している。その他の地域では2〜6年ごとに確認するという。
また、変わった場所を、効率的に更新する方法としては、新旧の空中写真同士を比較して変化箇所を修正する。あるいはドライブレコードデータ、パートナー企業から提供されたデータなどを使って、道路状況などに変化があったところを適時修正。できるだけ鮮度・精度の高いデータ作りを心掛けている。
課題は「地図の鮮度をどう上げるか」 統計、観光情報も活用
古屋氏は今後の課題として「地図の鮮度を上げる最新情報をいかにして効率的に収集していくか、また、地図により多くの情報を持たせるかも重要」だと強調する。
「例えば『この交差点は衝突事故が多い』『この通りは歩行者の飛び出しが多い』といった過去の統計情報を意味のある情報として、ドライバーに伝えることで、注意を喚起できます」
こうしたことは一部では既に実施しているものの、さらに広げていく必要がある。
位置情報を深堀りすることにより、地域住民や旅行者の移動ニーズに対応して、(複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約などを一括でできる)「MaaS」(マース)の利便性向上や、地域の課題解決にも資する重要な手段にもなる。
ゼンリンは長崎県で観光に関する課題解決に役立てようと、旅行、交通関係の会社などと連携し、サービスを提供している。ゼンリンの地図情報をベースに観光情報や移動ルート、そのためのチケット販売を一気通貫で提供することで、旅行者にとって地図の価値が増すことになる。
この数年は将来的な自動運転の普及を見据えての取り組みや、防災の観点からゼンリンの地図へのニーズが高まってきている。一方、古屋氏も指摘するように、自動運転に必要な地図作りは、地図メーカーだけでは完成品にならない。特にセンサー技術の進歩に依存するところが多く、生成AIなど先端の技術進歩を取り入れながら、自動車メーカー、サプライヤー、行政自治体などとも協力しながら、より良いものを作り普及させていくしかない。
その意味で、今後は使い勝手の良い自動運転地図を創るために、どのように協業するかもポイントになりそうだ。
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