連載
「百貨店閉店でにぎわいが消えた」キャンペーンに、新聞が“チカラ”を入れる理由:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
ここ数日、百貨店閉鎖に関連して地方の悲観的な報道が続いている。だが実際には、近くで新しい商業施設の“にぎわい”があるエリアもある。なぜこのようなギャップが生まれてしまったのか。
「山形屋ショック」が与えた影響
鹿児島県唯一の百貨店にして、創業270年の名門企業である山形屋が借入金の返済に行き詰まり、グループ会社16社とともに私的整理の一種である「事業再生ADR手続き」に入っていると報じられた。百貨店業界以外にも大きな衝撃を与えたのは記憶に新しいところだ。
その後、事業再生計画は成立。山形屋は現在も営業しているが、「また経営が傾いたら閉店するのでは」という市民の不安が払拭(ふっしょく)されたわけではない。そこで前述したように鹿児島の地元紙『南日本新聞』が、「百貨店ゼロ県」の島根県松江市へ取材に行った。つまり、この記事は「山形屋再建」をテーマにした連載で、「百貨店がなくなった街がどんなに寂しいか」ということを鹿児島市民に知らしめる目的でつくられたものなのだ。
このような話を聞くと、なぜ新聞はそんなに「百貨店閉店でにぎわいが消えた」という方向へ話を持っていきたいのかと不思議に思う人も多いはずだ。
前出『南日本新聞』の記事に対して専門家なども指摘しているが、今日本の地方都市で起きている現象は「百貨店閉店でにぎわいが消えた」ではなく「にぎわいが消えたから百貨店が閉店した」が正しい。
では、なぜ“にぎわい”が消えたのかというと、ごくシンプルに人口減少だ。
2024年4月に総務省が発表した人口推計によると、2023年は前年比で59万5000人減っている。これは山形屋のある鹿児島市の人口と同じだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
百貨店はこのまま消えてしまうのか 「いや、復活できる」これだけの理由
百貨店が苦しんでいる。新型コロナに伴う行動規制が緩和されたことによって、どん底からは浮上しているわけだが、楽観できる状況ではない。百貨店が生き残るためには、どういった手を打てばいいのだろうか。幅広い層を狙うのではなく……。
「値下げで過去最高益」のイオンが、賃金を上げなければ非常にマズいワケ
「値下げ」は消費者にとって喜ばしい話のようだが、実は日本全体の視点で考えると、あまり喜ばしい話ともいえない。その理由は……。
「年収700万円」の人が住んでいるところ データを分析して分かってきた
「年収700万円」ファミリーは、どんなところに住んでいるのでしょうか。データを分析してみました。
「吉祥寺」「湘南」「軽井沢」どこからどこまで論争 お店や施設を可視化してみた
「湘南」と聞いて、どのあたりの地名を思い浮かべますか? サザンオールスターズの桑田佳祐さんの故郷・茅ヶ崎市や、江ノ島のある藤沢市がぱっと思いつきますが、実際のところ、どのあたりまでが「湘南」なのでしょうか。

