東急の「自動運転バス実証実験」に京急バスも参加、成果と課題が見えてきた:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
東急と東急バス、京浜急行バスが自動運転バスの共同実証実験を行った。川崎市麻生区の虹が丘営業所エリアと横浜市金沢区の能見台営業所エリアで実施。遠隔コントロールセンターは、横浜みなとみらい地区の京急グループ本社ビルに設置。運転席に運転者が座り、常時状態監視を行う「自動運転レベル2」である。
虹ヶ丘・すすき野エリア:過去の実証実験を振り返る
東急と東急バスが自動運転バスに取り組む理由は「運転手不足」だけではない。むしろ「路線を増やしたい」だ。既存の大型路線バスを代替するつもりはなく、大型路線バスの停留所末端付近から目的地同士を結ぶ「ラストワンマイル」に導入したい。比較的交通量が少なく、住宅からスーパーマーケット、クリニックなどを結ぶ路線に導入したいと考えている。しかし、新路線を開設しようにも運転手が足りない。だから自動運転の可能性を試したい。
「虹ヶ丘・すすき野エリア」の実証実験の第1回目は、EV自動運転バスの試運転的な要素が強い。事前にレーザーレーダーで走行ルートの点群データを取得し、高精度三次元地図データを作成しておく。EVバスは走行時のレーザーレーダーの測定値を元に三次元地図データを参照して自分の位置を把握して走行する。GPSは使わない。一時停止標識、障害物、交差点を検知すると停止し、運転士が手動で発信操作や駐車車両の回避操作を行う。時速19キロメートルという低速車両が公道で協調できるかも検証した。
【関連記事】東急バスのEV自動運転バス 当面の目標は「路線バスの先」にある(2022年9月18日の本連載)
第2回目は、スーパーマーケットやコンビニを通る「実用的なルート」に変更した。経由地の1つに多目的イベント広場「nexusチャレンジパーク早野」を組み込んでイベントを開催し、そこに行くための移動手段として自動運転バスを位置付けた。また虹が丘営業所内にコントロールセンターを設置して、自動運転バスの車内と車外を遠隔監視した。
車内にはモニター画面を設置して、乗客に対して運転手の代わりに行先や次のバス停などを案内するシステムを設置した。実営業に向けた実験として、スマートフォンアプリ「LINE」を使った乗車予約システムを採用した。途中のバス停で乗車と降車が可能になり、乗車定員の管理もできる。しかし沿線への周知が足りなかったようで、地元の人々が利用しにくかったようにも感じた。実証実験ではほとんどの試乗希望者が一周乗車を望んだからだ。営業運転に向けた課題が浮き彫りになったという点で「成果アリ」だった。
【関連記事】「東急の自動運転バス」実証実験2回目、真の目的と課題が見えた(2023年04月21日の本連載)
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