クラファンの存在意義はどこへ向かう? 寄付から物販、「地下Vtuber」を推す場へ変わる今(3/4 ページ)
すっかり定着したクラウドファンディングという文化だが、ここで繰り広げられるプロジェクトに変化が起きていることをご存じだろうか。
クラウドファンディングと推し活
最近のクラファン市場で筆者が特に注目しているのが、「推し活」プロジェクトである。推し活とは、自分の好きなアーティストやキャラクターなどを応援する活動のことである。
クラファンは、この推し活の受け皿として機能している。特にキャンプファイヤーのサイトを見てみると、VTuber(バーチャルYouTuber)関連のプロジェクトが多数立ち上がっているのが見て取れる。それも大手Vtuberではなく、個人で活動している中小Vtuberの顔ぶれが目立つ。
その理由としてまず、中小Vtuberの資金調達源としてYouTubeの広告収入やスーパーチャット(投げ銭)は非常に不安定であることが挙げられる。目的が明確化したクラファンのプロジェクトであれば、熱量の高いファンに直接応援を呼び掛けることができ、安定した収益を確保できる。
特に、Vtuberは何かとお金がかかる職業だ。例えば、新たな「モデル(衣装に相当するもの)」を制作するためには、モデリングやモーションの作成を制作会社などに依頼することになる。その相場は一概に言えないが、数百万円単位の金額がかかることも珍しくない。
企業に所属し、チャンネル登録者数が100万人を超えるような大手Vtuberなら話は別だが、個人で活動している中小Vtuberがこうした大金を用意するのは容易ではない。そこでクラファンというわけだ。
調査会社ユーザーローカルによると、Vtuberの数は2022年11月28日時点で2万人を超えたとされている。小規模ながらコアなファンを抱えたVtuberもまた多数生まれている。「地下アイドル」を想像してもらうと分かりやすいかもしれない。
こうした熱量の高いファンに直接応援してもらう手段として、クラファンは有効に機能する。スーパーチャットとの大きな違いは「リターン」の存在だ。リターンは応援金額の多寡によって、グッズやサイン入りブロマイド、オリジナルボイスや動画、「直接電話できる権利」などが用意されている。大手Vtuberでは難しいような、よりファン個人に向けたリターンを用意できるのは「クラファン×中小Vtuber」の強みだろう。
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