広島県の旅館・ホテル、47都道府県で「トップ」の増収幅 なぜ?:「旅館・ホテル業界」 動向調査
帝国データバンクの調査は、「旅館・ホテル業界」 動向調査(2023年度)を実施した。その結果、広島県が最も「増収幅」が大きいことが分かった。なぜか?
帝国データバンクの調査によると、2023年度通期の「旅館・ホテル市場」はコロナ前並みの4.9兆円前後(事業者売上高ベース)となる見込みだ。
過去1年間に同社が調査した全国の旅館・ホテル業者のうち、52.6%が「増収」基調であることが分かった。新型コロナの5類移行による観光需要の回復などが要因として挙げられる。都市部のビジネスホテル業態などを中心に、前年度比20%超の大幅な増収を見込む企業も目立った。
しかし、増収の割合は1年前に比べると減少している。そんな中で、増収基調と回答したホテル・旅館の割合が最も高かったのは「広島県」(84.0%)だった。以降、「和歌山県」(83.3%)、「沖縄県」(82.4%)と続いた。
なぜ、47都道府県で広島県がトップだったのか?
福岡県などの人気の観光地を抑え、広島県がトップに なぜ?
広島県内に増収基調と回答した企業が多かった理由として、帝国データバンクは「広島県の観光客は欧米人の割合が高いようで、回復が遅れた中国からの訪日客がメインだった他地域に比べると、比較的観光の回復が早かったです。また、広島サミットにより、特に広島への注目が集まったようです」と説明する。
2位の和歌山県についても「比較的訪日客の戻りが早いエリアでした。ただ、コロナ禍での落ち込みが大きかった分、戻り幅(増収幅)も大きかったと見られます。和歌山県の場合、訪日客の『地方ツーリズム化』を受け、高野山などマイナーな観光地が注目されたこと、関西国際空港・中部空港の二大都市圏に近く、誘客がしやすいといったことも影響したと考えられます」とコメントしている。
3位の沖縄県は「もともと観光産業の比重が非常に高いため、国内外問わず、誘客が非常に活発だったことが奏功しました」という。
人手不足への対応 観光ビジネスのカギに
観光庁によると、2024年4月に国内のホテルや旅館に泊まった日本人・外国人の総数は前年同月比10.1%増の延べ約5190万人泊だった。中でも、外国人は同46.9%増・約1450万人泊に上り、訪日客の急増ぶりが目立った。
また、客室稼働率も全体で59.8%と、コロナ前に迫る高い水準で推移した。1ドル150円を超える円安で割安感のある日本旅行が人気となっていることを追い風に、国内の旅館・ホテル市場は今後も好調を維持すると見られる。2024年度の市場は、5年ぶりに5兆円台に到達し、過去最高を更新する可能性もある。
他方、宿泊現場ではフロントや調理スタッフなどの確保が間に合っていないなど、依然として深刻な人手不足状態が続いている。宿泊予約や客室稼働率に制限を設けて運営するなど、旺盛な需要を十分に取り込むことが難しいケースも見られる。
帝国データバンクの調査では、旅館・ホテル業界の人手不足割合は、正規・非正規人材ともに6割を超える水準で推移した。外国人材の登用や、受付の自動化などの省人化投資が必要な一方、こうした対策が難しい事業者もある。人手不足への対応が2024年度における旅館・ホテル市場の成否を分けるポイントになるだろう。
調査結果は、帝国データバンクが保有する企業信用調査報告書ファイル「CCR」から、「旅館・ホテル」業界の企業931社における業況(売上高)に基づいて算出した。
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