たまにウソつく生成AIに「契約書管理」は無理? 「40年の歴史」持つ言語解析AIが再評価されるワケ:万能ではないからこそ(5/5 ページ)
生成AIがビジネスの世界にもたらすインパクトは巨大であるものの、万能ではない。契約書関連の業務をデジタル化するリーガルテック市場では、旧来から磨き上げてきた技術が使われている。
契約書管理の未来:戦略的資産としての活用へ
Contract Oneが目指す未来像は、単なる契約書管理の効率化にとどまらない。
「われわれは、(名刺管理の)Sansanを人流、Contract Oneを商流、Bill One(Sansanの請求書管理サービス)を金流と位置付けています。これらを連携させることで、ビジネスのインフラを構築したい」と尾花氏は言う。
例えば、営業担当者がSansanで顧客情報を確認する際に、その企業との契約書の概要も同時に表示されるようになっている。これにより、営業担当者は商談の際に、既存の契約内容を踏まえた提案ができるようになる。また、契約の自動更新期限が近づいた際にアラートを出す機能も、営業担当者は適切なタイミングで顧客にアプローチし、契約の継続や条件の改善を図ることにつながる。
さらにその先には、契約書データを営業活動に活用する構想もある。「例えば、ある取引先との複数の売買契約を比較し、『先方からこれだけ買っているのに、売りが少ないのではないか』といった分析ができるようになる。契約書を戦略的に活用する新しい可能性が開ける」と尾花氏は展望を語る。
Sansanは名刺データを共有することで営業力を強化するというアプローチによって、「管理」というあいまいな取り組みを「売り上げアップ」に結び付けて急成長した。契約書についても、正確な情報をデータベースに記録し、さらに現場の担当者が使いやすくすることで、収益拡大につなげていけるかもしれない。単なるコスト削減ではなく、売り上げ拡大につながるリーガルテックへ。契約書が戦略的資産となる日も近いのかもしれない。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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