目指すはARR100億円超 ラクス「楽楽請求」ローンチの勝算(1/3 ページ)
インボイス制度導入を機に、DXが急激に拡大してきている請求書受領サービス市場。SaaS企業の雄であるラクスも参入を発表した。数年でARR100億円超を目指すという、勝算の根拠とは?
インボイス制度導入を機に、DXが急激に拡大してきている請求書受領サービス市場。そんな中、SaaS企業の雄であるラクスが7月から、この領域に参入することを発表した。
これまでエンタープライズ領域ではSansanのBill Oneが、中小中堅領域ではinvoxがトップシェアを誇ってきたが、ラクスの進出で業界地図に変化が起きるかもしれない。
SaaSトップ企業・ラクスの参入
ラクスは、経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」などの経理を中心としたバックオフィス向けSaaSプロダクトを提供する企業だ。創業は2000年とSaaS企業の中では老舗で、ITエンジニアスクール、メール配信サービスなどの事業を手掛け、現在は「楽楽シリーズ」として知られるバックオフィス向けSaaSプロダクトをメインとしている。
2024年3月期の連結決算で売上高は384億円、営業利益は55億円に達した。UB Venturesがまとめた国内SaaS企業のARRランキング(2024年2月時点)によると、ラクスはSansanやサイボウズ、フリー、マネーフォワードなどを抑えて国内トップだ。
かといって成熟した大企業かというと、それも違う。
売上高は前年同期比で40.2%増。競合が投資によって赤字になりながら成長を目指している中、14%もの営業利益率を出しながら成長率でも群を抜くというポジションにある。
主力の楽楽シリーズは、売上高144億円の楽楽精算(経費精算)を筆頭に、楽楽明細(請求書発行)が68億円、楽楽販売(販売管理)が35億円という規模感だ。20億円程度のARRで上場している企業も多いことを考えると、その規模のサービスを複数展開しているラクスのすごさが分かる。
大手もスタートアップもひしめき合う、請求書受領サービス市場
請求書受領サービスは大手SaaS企業からスタートアップまで、数多くがひしめき合う市場だ。
金額シェアではARR68億円のSansan Bill Oneがトップ。エンタープライズ向けでは、スタートアップのTOKIUMインボイスも競合に位置する。
一方で導入企業数でトップなのが独立系のinvoxだ。機能面では他サービスと遜色ない一方、初期費用0円、月額基本料金1078円という低価格でシェアを拡大。無償利用も含めて2万7500社が導入している。またAI活用とUI/UXへのこだわりで、スタートアップを中心に導入が多いLayerXのバクラク請求書受取も存在感を増している。
とはいえ、請求書受領システムの市場は企業の導入はまだこれからで、ホワイトスペースは大きい。電子帳簿保存法、インボイス制度のスタートに加え、コロナ禍によるリモートワークが重なり、ここ数年で一気に市場が立ち上がったからだ。
ラクスが行った調査によると、請求書受領システムの導入率は22.3%にとどまっている。これは経費精算システムの68.4%に比べても、まだまだ伸びしろがある。
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