ドクターイエローはなぜ生まれ、消えていくのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
「幸せの黄色い新幹線」こと、ドクターイエローが引退する。JR東海とJR西日本の発表によると理由は老朽化。そして今後は新しいドクターイエローはつくらず、営業車両N700Sで計測を実施するという。そこでドクターイエローの誕生から引退までを振り返り、営業車両での計測について考えてみたい。
ドクターイエローが黄色になった理由は、警戒色だから。夜間の保守作業でも目立つ色として、事故防止のために使われてきた。ドクターイエローに限らず、在来線の保守車両も黄色が採用されているから、電車に乗って注意深く観察すると、黄色の小さな機関車やトロッコ貨車を見つけられるはずだ。ゆえに試験車の黄色は伝統色といえる。もっとも最近は、黄色以外の色を使う事例が増えている。JR東日本の計測車両「East-I(イーストアイ)」は白地に赤帯を採用した。
ドクターイエローがどうして「しあわせの黄色い新幹線」になったか。これは山田洋次監督の映画『幸福の黄色いハンカチ』の影響だと思われる。劇場公開は1977年10月だった。1975年頃から「スーパーカーブーム」が起きて、子どもたちの間で外車への関心が高まる。その流れで「黄色いフォルクスワーゲン・ビートルを見たらラッキー」とされた。1977年にグループサウンズのサーフライダーズが「黄色いワーゲン」を発表する。これ以降、歌謡曲にたびたび黄色いワーゲンや黄色いビートルが登場する。
1カ月に3往復程度の走行だから、ビートルより目撃者が少ない。しかし2006年7月に始まった「Twitter(現、X)」によって、目撃情報がネットで広まるようになった。誰かが「いま名古屋から東京方面に向かったぞ」とつぶやけば、多摩川の鉄橋で待ち構えられる。
ドクターイエローは広く知られるようになり、子どもたちにも「新幹線のお医者さん」として人気だ。おもちゃやキャラクターグッズもたくさんある。JR東海も心得ており、ときどき試乗ツアーを企画している。
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