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ドクターイエローはなぜ生まれ、消えていくのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

「幸せの黄色い新幹線」こと、ドクターイエローが引退する。JR東海とJR西日本の発表によると理由は老朽化。そして今後は新しいドクターイエローはつくらず、営業車両N700Sで計測を実施するという。そこでドクターイエローの誕生から引退までを振り返り、営業車両での計測について考えてみたい。

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 新N700Sの検査性能は、ドクターイエローを超える。架線をラインセンサカメラで撮影し、レーザー光によって位置関係の異常を検知できる。近赤外線とAIによって、架線取り付け金具の変形や破損を検知できる。パンタグラフ付近にカメラを搭載し、飛来物を検知すると運転士と指令所に通知する。

 軌道(レールなど)の検査は車体の床下にカメラとセンサーを取り付け、画像の点群データを解析して異常を検知する。現在は保守員が週に1度、線路上を徒歩で1000キロメートル以上も歩いて点検している。この作業を代替する。


軌道材料モニタリングシステム(出典:JR東海、東海道新幹線 軌道材料モニタリングシステムの開発について

 これらの機能は、機器の小型化、精度の高いセンサーとAIの解析、リアルタイムに指令所に報告できる高速通信機能の開発によって可能となった。技術の進歩はすさまじい。ドクターイエローは室内に巨大な機械を搭載し、複数の計測担当者が車内でモニタリングして解析し、架線状態を屋根のドームで観測する。もうそんな車両はいらないことが分かる。

 JR東海は検測機能を強化した新しい「N700S」を、2026年度に4編成、2027年度に7編成、2028年度に6編成、合計17編成を投入する。また既存のN700Sにも一部機能を追加するという。ドクターイエローは消えるけれども、17編成の後任がやってくる。

 ドクターイエローの引退は寂しいけれど、ドクターイエローを超える検査システムが実装される。そこにJR東海の「安全運行に対する執念」を感じる。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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