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映画『ルックバック』成功から浮かび上がる、集英社の思惑とは:エンタメ×ビジネスを科学する(4/4 ページ)
動員数59万人、累計興行収入10億円を突破した『ルックバック』。同作の成功から、新たなメディアミックスの潮流を読む。
「読み切り作品×アニメ×配信」は今後も増える
「読み切り作品×アニメ×配信」という形態は、作り手側にもメリットがある。1話完結で尺が短く、放送枠といったスケジュールの制約も比較的緩いため、クリエイティブを優先して画のクオリティーを上げることや、新しい手法に挑戦するといった試みを行いやすい。
また、完結したストーリーを描くため、連載作品のアニメ化で生じる「後の展開との齟齬(そご)」や「連載作品に追い付いてしまう」といった問題も起きない。もちろん、収益性の課題は変わらず生じるが、さまざまな面でリスクが小さいといえるのだ。
従って、制作会社としての実績を積む場となることに加え、次世代を担う人材が経験を積む場、挑戦する場としての機能を持つ可能性も秘めている。
このように、読み切り作品のアニメ化は作者・出版社・アニメ制作会社それぞれにポジティブな影響を及ぼす。アニメ制作現場が逼迫(ひっぱく)しない限りは、今後も増加していくと考えられる。
本稿では集英社の藤本タツキ氏や尾田栄一郎氏の事例を紹介したが、集英社はもちろんのこと、世に出し切れていない人気作家の読み切り作品・短編作品は多数存在する。
日本のコンテンツビジネスの活性化、そして配信プラットフォームを通じたグローバルでのプレゼンス向上に向け、積極的に取り組む価値がある領域といえるだろう。
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