上司が謝ってしまったら……進むカスハラ対策、最大の難点は「あいまいすぎる境界線」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
厚労省はカスハラ対策として、企業に「カスハラ対策」を義務付けるべきだとする報告書の素案を示しました。有識者検討会が「カスハラの定義」を定め、対策や対応マニュアルの整備を企業に求める方針です。しかし、カスハラ問題の難しさが消えるワケではありません。グレーゾーンが多く、対応が難しいカスハラと企業はどのように向き合っていくべきでしょうか。
「我が社の従業員を守るには」――経営者に求められること
繰り返しますが、国が法制化に動き出し、すでに企業や自治体が動いているので、カスハラに対し今以上の強制力が働くことは間違いないでしょう。
しかし、「我が社の従業員」を守るにはこれだけじゃ物足りません。
カスハラの境界線が曖昧で、グレーゾーンが多いからこそ、現場が「ノー!」と言えば、それを最大限に尊重し会社は断固「ノー!」と言い続ける。
それと同時に、毎回「ノー!」と毅然とした態度を取ること自体、現場のストレスになるので、グレーゾーンを「白」にする対策もきちんと行わない限り、「我が社の従業員」を守ることなどできないと思うのです。
そのために不可欠なのは、コミュニケーションに尽きます。
識者の中には「カスハラは店員側の対応にも問題がある、というレベルを超えている」とする意見もありますが、カスハラをコミュニケーションの問題と捉え、客の言動をエスカレートさせない視点も必要です。
全てのグレーゾーンを解消できなくても、カスハラは「人と人の関わり合いの中で起こる悪態」の一つです。
職員と市民、働く人と消費者、サービスする人とサービスを受ける人、クレーム対応をする人とクレームを言う人、といったお客とのコミュニケーションに加え、職場のメンバー同士の良好なコミュニケーションもカギを握ります。
具体的には、現場の人は「自分では対応は難しい」と感じたら、職場の人のサポートを頼めたり、管理職などに即座に連絡できたりする仕組みや制度も万全にする必要があります。
そして、顧客側としてお店や施設を利用する際は、見て見ぬふりをしないで、他のスタッフに「ちょっとあそこで……」と声をかける勇気を持ってほしいです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。
この記事を読んだ方へ チームワークはこう作る!
ワークスタイル変革の第一線を走るサイボウズの青野慶久社長が「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」に登壇。
「企業の成長」と「働きやすさ」をどう両立させるのか――多くの企業が、組織と従業員のベストな関係を探している。DXやコロナ禍を経てコミュニケーションの形も働き方もガラリと変わった今、“理想的な職場”を実現するカギとは?
- イベント「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」
- 2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
- 無料でご視聴いただけます
- こちらから無料登録してご視聴ください
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「育休はなくす、その代わり……」 子なし社員への「不公平対策」が生んだ、予想外の結果
出生率が過去最低となり、東京都ではついに「1」を下回ったことが大きく話題になっています。結婚や出産を希望する人が、安心してその未来を選べるようにするために、企業ができることは何か。「育児休暇をあえてなくした企業」の事例をもとに、社員を疲弊させない経営戦略について考えます。
タクシーは3時間待ち──地方の深刻な人手不足は「むしろ勝機」 地銀9行が手を組み、何を仕掛けるのか
人手不足にあえぐ地方の中小企業を、ベンチャーとのマッチングで好転させられないか──。UB Venturesと地方銀行9行は7月3日、「地域課題解決DXコンソーシアム」を発足した。どのような取り組みを進めていくのだろうか。
人手不足倒産、年間の最多を更新か 労働市場の流動化も影響?
帝国データバンクが調査結果を発表した。
伊藤忠「フレックス制をやめて朝型勤務に」 それから10年で起きた変化
2013年にフレックス制度を廃止し、朝型勤務制度や朝食の無料提供の取り組みを始めた伊藤忠商事。それから約10年が経過したが、どのような変化が起きているのか。
「再配達は有料に」物流2024年問題、ドライバーの本音は?
「再配達を有料化してほしい」――。一般社団法人「神奈川県トラック協会」が実施した「物流2024年問題」に関する意識調査で、運送関係者からこうした意見が上がった。調査から分かった、運送ドライバーの本音とは。

