日本一短い航空路線が廃止 「たった10分」のフライトがもたらしてきたもの:ある地方交通の終わり(1/5 ページ)
沖縄県の南大東島(みなみだいとうじま)と北大東島(きただいとうじま)を結ぶ同区間は「日本最短」の航空路線で、直線距離にしてたった13キロメートル。東京都内を走るJR京浜東北線の東京〜蒲田間よりも短い距離である。飛行時間は約10分。
日本航空(JAL)グループの1社、琉球エアーコミューター(RAC)が1997年10月から運航していた南大東〜北大東路線が2024年7月末で廃止となる。
沖縄県の南大東島(みなみだいとうじま)と北大東島(きただいとうじま)を結ぶ同区間は「日本最短」の航空路線で、直線距離にしてたった13キロメートル。東京都内を走るJR京浜東北線の東京〜蒲田間よりも短い距離である。飛行時間は約10分。
廃止が目前に迫った7月中旬、日本一短いフライトを体験してきた。また、同路線に260回以上の乗務経験があるRACの客室乗務員に話を聞いた。
従来はほとんどの乗客がビジネス利用
7月某日。那覇空港を午前7時55分に出発するプロペラ機「RAC861便」に乗り込み、一路、南大東島へと向かう。
那覇と南大東、北大東の航空路線は、通称「三角運航」と呼ばれる。火曜・水曜・木曜は那覇→南大東→北大東→那覇の順に飛び、月曜・金曜・土曜・日曜はその逆回りとなる。これとは別に那覇〜南大東のみ毎日1便(往復便)ある。従って、トータルで見ると一日に那覇〜南大東は1.5便、那覇〜北大東は0.5便となる。
本稿で取り上げる南大東〜北大東間は、住民の移動など利便性を考慮した路線ではあるものの、経由としての利用が多いため、以下の行程で日帰りする人も相当数いるそうだ。
- 那覇→南大東(午前7時55分発/午前8時55分着)
- 南大東→北大東(午後2時45分発/午後3時05分着)
- 北大東→那覇(午後3時35分発/午後4時40分着)
※2024年7月時点の情報
使用される飛行機は「DHC-8-400カーゴコンビ」。乗客への提供席数は50。本来は74人乗りであるが、座席を減らして貨物スペースを大きく広げた設計にしている。理由は、沖縄本島と離島をつなぐ物流手段としてのニーズが高いからだ。世界でも類を見ないこの貨客混載の飛行機をRACは現在5機所有している。なお、那覇〜久米島、那覇〜与那国といった同社の他路線もこの飛行機を使う。
さて、筆者が乗ったRAC861便の機内を見渡したところ、3分の1ほどが作業着姿の男性だった。これは特段珍しい光景ではなく、電気などのインフラ工事や建設業の人たち、あるいは行政職員などによるビジネスユースが大半で、この路線の観光利用は沖縄本島と比べるとそれほど多くないという。沖縄県が公表する統計データによると、2020年度の観光客数は南大東島が2999人、北大東島が482人となっている。
RAC861便は定刻通りに出発。果てしなく広がる海の上空をフライトすること約1時間、那覇から360キロ以上離れた目的地の南大東空港に到着した。
先ほど触れたように、普段は観光目的で訪れる人は少ないが、5月の大型連休明けあたりから「日本一短い航空路線がなくなってしまう前に乗っておきたい」という観光客が押し寄せており、島はちょっとした“観光バブル”状態に。宿泊先のオーナーに聞くと、レンタカーやレンタル原付バイクなどが不足しているとのこと。実は筆者も宿に事前予約を入れたものの、もう空きがないと言われ、急遽(きゅうきょ)紹介された店へ借りに行った。
何とか原付バイクを確保できたので、初上陸した南大東島の各所を巡ってみることに。一周は約20キロ。道路が整備されているため、原付バイクでも心地良く走ることができる。サトウキビで地元経済が成り立つ島だけあって、どこを走っていてもサトウキビ畑が目に入るし、黒糖の香りもほのかに漂ってくる。それもそのはず、南大東島の耕地面積約1500ヘクタールの9割以上でサトウキビを栽培しているからだ。
滞在中の天気はおおむね快晴で、「絶海の孤島」という名に違わぬ大自然のすごみを全身で味わえた。
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