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日本一短い航空路線が廃止 「たった10分」のフライトがもたらしてきたものある地方交通の終わり(4/5 ページ)

沖縄県の南大東島(みなみだいとうじま)と北大東島(きただいとうじま)を結ぶ同区間は「日本最短」の航空路線で、直線距離にしてたった13キロメートル。東京都内を走るJR京浜東北線の東京〜蒲田間よりも短い距離である。飛行時間は約10分。

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島の子どもたちの人生を見守る

 長年この路線に乗務してきた天河さんの一番の思い出は、島の子どもたちとの絆(きずな)が生まれたことである。

 「大東路線は家族連れでご利用される島の方がたくさんいます。そうした中で妊婦さんに出会うことも多いです」

 南大東島、北大東島ともに産婦人科クリニックはなく、出産は那覇市など沖縄本島の病院へ行かねばならない。そのため出産前の定期検診から何度も通う女性も少なくない。

 「妊娠されている時に初めて会い、その次は『産みに行ってきます』と那覇へ向かうタイミング。そして次は赤ちゃんと一緒に帰ってくる際に立ち会って。そうした出来事は定期的にありましたね」


南大東島を一望できる日の丸展望台から

 それだけでは終わらない。その乳児が成長していく過程もつぶさに見ることができる。小学生になって、兄弟ができて……。そして、中学校を卒業するとほとんどの子どもは進学のために島から出ていくことになる。高校のない離島で暮らす子どもたちが旅立つ、いわゆる「15の春」である。

 RACでは毎年3月に「15の春」の門出を祝い、応援する活動をしている。天河さんもこれまでに何人もの子どもたちが島を巣立っていくのを見届けてきた。

 過去に見送ってきた子どもたちが、今では本土の大学で勉強していたり、就職していたりする話をその家族から聞くこともある。天河さんは感慨深い表情で次のように話す。

 「親戚の子どもの人生を見守っているような感覚ですね。お母さんのお腹にいる時からその子が大きくなっていくまでを見る機会が幾度もありました。これはもうRACならではですし、大東島との関わりを強く感じています」

 小さな島から少人数を運ぶ航空路線に長年乗務する、この仕事だからこその醍醐味だろう。

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