日本の「知育菓子」外国人になぜ人気? 「3倍の値段」でも売れるワケ:「ねるねるねるね」以外も(3/3 ページ)
インバウンド需要が盛り上がる中、外国人の定番土産となっている日本の菓子。そうした中、SNSを中心に“知育菓子(DIY Candy For Kids)”と呼ばれるジャンルが海外でたびたび話題になっていることをご存じだろうか。
日本の2〜3倍の値段でも売れる
同社の知育菓子商品の中で、国内では不動の人気がある「ねるねるねるね」。知育菓子の国内売り上げ約65億円のうち、15億円を同商品1ブランドで占めている。だが、海外で同商品の知名度は高くない。「ねるねるねるね」という独特のネーミングは、商標のローカライズが難しいからだ。代わりに、同じく知育菓子の「ポッピンクッキン」シリーズが支持されている。
為替の影響もあり、同シリーズは日本の2〜3倍近い店頭価格で販売されている。そのためターゲット層も日本とは異なるようだ。
「『ポッピンクッキン』シリーズの価格は中国だと40元(約800円)。アメリカでは5ドル(約750円)前後で、最も高い小売店だと10ドルほどで販売されています。結果として経済的に余裕があり、教育への関心が高い家庭向けの商品という位置付けになっています」
海外ではこうした現地の購入層を念頭にプロモーションを実施している。例えば、アジア圏では知育菓子が持つ教育的な価値を前面に押し出している。台湾の大型書店チェーン「誠品書店」では、「ねるねる教室」「DIYクラス」と銘打ったイベントを実施し、化学実験を思わせる体験を消費者に訴求しているという。
ブランド認知の非対称性、どう乗り越える?
海外の売り上げ比率は全体の2割弱と、国内販売の割合はまだまだ大きい。だが、6月単月の訪日外客数(推計値)313万人(推計値)という政府観光局の発表などを踏まえると、海外在住者の購入が国内外で増えているのは確実といえる。
上述したように「ねるねるねるね」は国内の知育菓子のブランディングで大きなアドバンテージがあるが、海外展開ではまず「ポッピンクッキン」のブランドを大々的に打ち出している。日本と海外ではブランド認知の非対称性があるのだ。
そうした中、クラシエは今後のブランド戦略についてどのように考えているのか。
「おそらく国内の商品開発部門も海外の需要は常に意識しながら開発していくでしょうし、その重要性は増してきています。ブランドは徐々に国内外で統一させていく方向です」
実際、国内でも訪日外国人観光客に分かりやすいように、パッケージデザインの微調整を行っている。日本で販売する商品についても、「ポッピンクッキン」のロゴを少し大きくし、視認性を上げているのだ。
「ポッピンクッキン たのしいおすしやさん」のパッケージ比較。左:中国版、中:国内版(リニューアル後)、右:国内版(リニューアル前)。「Popin' Cookin'」のロゴを大きくする変更を行っている。
誕生から30年が経過した知育菓子シリーズが今、国内外のブランド戦略を見直す岐路にいる。売り上げを大きく飛躍させる“化学反応”を起こせるか。
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