テレビCMを打ちまくる「Temu」は危険なのか 激安を実現するビジネスモデルとは:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
中国の激安通販サイト「Temu」が、テレビCMなどに多額の広告費を投入していることで注目されている。独自のサプライチェーンによって低価格を実現しているが、商品のクオリティーの低さが問題視される。個人データが中国に渡る可能性もあり、懸念は大きい。
「直販モデル」でコスト削減
筆者の印象では、Temuのビジネスは純中国国産で、中国ビジネスの集大成とも言えるものだ。Temuは、黒船ならぬ、真っ赤な国旗の中国から送られた「赤船」とでも言えるのではないかと思う。
というのも、生産やサプライチェーンはほぼ中国で完結しているからだ。特徴的なのは、消費者直販モデル。卸売業者や流通業者のような中間業者を排除してコストを削減し、消費者に商品を直接売るビジネスモデルだ。ユーザーと生産者であるサプライヤーを直接つないでいる。
そして、「世界の工場」として知られてきた中国特有のビジネス環境がベースになっている。Temuのサプライヤーのほとんどは中国に拠点がある会社で、Temuが提供するソフトウェアを導入して生産の最適化を行い、コストを最小化する。そして消費者の需要を瞬時に売買につなげられる体制を敷いている。Temuはこれを「革新的なサプライチェーン最適化技術」であるとうたっている。確かに低価格を実現しているが、その裏で過酷な負担がサプライヤーにのしかかっているようだ。
実は、Temuのサプライヤーの選び方は厳しい。関係者によれば、多くのサプライヤー企業がTemuに取り扱ってもらうために応募してくるという。最初の書類審査に通ると、実際にサンプル商品を提出して2次審査を受ける。そこでTemuは、同社が扱う同じような商品と比較し、他よりも安い場合は合格となり、販売にこぎ着けたらその価格を維持しなければならないという縛りがある。安い商品が出てくればそれより高い商品は売れなくなるので、安さで負けると姿を消すことになる。
こうした「ダンピング競争」が繰り広げられており、過酷な労働で自殺者が出ているケースもあると報告されている。ただそうした事情は、Temuの運営には関係ない。在庫も持たないのでとにかくコストは低くて済む。
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