急成長する“もう一つ”のポイント経済圏 知られざる「モッピー」のビジネスモデル:「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)
5大共通ポイントを中心としたポイント経済圏が注目を集めている。しかし、その陰で急成長を遂げている「もう一つのポイント経済圏」の存在は意外と知られていない。その会社とは……。
ポイント経済圏のビジネスモデルの進化
ポイント経済圏という言葉を耳にすると、多くの人は楽天ポイントやdポイントなどを思い浮かべるだろう。確かに、これらの大手ポイントは私たちの日常生活に深く浸透している。しかし、ポイントビジネスの世界はそれだけではない。知る人ぞ知る「もう一つのポイント経済圏」が存在し、静かに、しかし着実に成長を続けているのだ。
ポイント経済圏という言葉が広く使われるようになったが、その本質は何だろうか。実は、ポイント経済圏とは、割引によるマーケティング手法の進化形だ。その発展過程を追うことで、モッピーのようなポイントサイトの位置付けがより明確になる。
ポイントシステムの原点は、割引にある。しかし、単なる値引きとは異なり、ポイントには「貯める」という要素が加わる。これにより、顧客の再来店や継続的な利用を促す効果が生まれる。つまり、ポイントは顧客の囲い込みツールとして機能するのだ。
このポイントシステムの最もシンプルな形が、自社発行ポイントだ。その代表例として、ヨドバシカメラのゴールドポイントカードが挙げられる。購入金額に応じてポイントが付与され、そのポイントは次回の買い物で使用できる。これにより、顧客は自然とヨドバシカメラでの購入を選択するようになる。自社への囲い込みツールとして機能しているわけだ。
しかし、ビジネス環境の変化に伴い、より広範囲な顧客囲い込みの必要性が生じた。そこで次の段階として登場したのが、旧Tポイントに代表される共通ポイントだ。これは、ポイントを発行したり利用したりできる提携店舗を増やし、囲い込みの幅を広げたものだ。
顧客は、ECサイト、携帯電話、クレジットカードなど、企業グループ内のさまざまなサービスを利用することでポイントを貯める。そして、貯まったポイントは提携店舗で使用できる。複数の企業が共通のポイントを持ち連携することで、より大きな「経済圏」を形成し、顧客にとっての利便性を高めている。
そして、この流れをさらに進化させたのが、モッピーのようなポイントサイトだといえる。ポイントサイトに行くと、クレジットカードの申し込みやECサイトへのショッピング、動画配信サイトへの登録などが数多く並んでいる。さらに申し込んだ場合にもらえるポイント数が記載されており、ユーザーはポイントサイト経由で申し込めば、追加でポイントを得られるのだ。
どういったビジネスモデルなのか。ポイントメディア事業部マーケティンググループマネージャー、坂下昌範氏はこう説明する。「広告代理店からアフィリエイト案件をもらい、掲載料ではなく成果報酬で広告主から報酬をもらいます。その報酬の50〜80%をユーザーに還元しています」
モッピー自体は商品やサービスを販売せず、依頼のあった顧客にユーザーを誘導する形を取る。メディアなどの広告ビジネスと同じ形だ。そして、顧客が商品を買ったりサービスを申し込んだりして成約したら、顧客はモッピーに成果報酬という形で報酬を支払う。モッピーはそのうちの7割程度をポイントの形でユーザーに還元するという形だ。
このように、ポイント経済圏は、自社単体ですべて完結するところからスタートし、他社も巻き込んだ共通ポイントに発展した。そして会社単位から商品・サービス単位へと粒度を細かくし、経済圏というよりも、お得の概念を前面に押し出した。
共通ポイントの競争が激化する中、実はそこに並走する形で、こうしたポイントサイトが急成長しているわけだ。
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