AIパソコン、5年間で急速に拡大 MM総研が予想する「普及シナリオ」は?
MM総研が、国内の法人パソコン、タブレット調達担当者を対象に実施した「AIパソコンの国内法人市場予測」によると、2023年度に登場したAIパソコンの年間出荷台数は、2028年度に525万台規模まで拡大するという。
今後5年間で、生成AIを本体に組み込んだAI内蔵パソコン(AIパソコン)の需要が急増しそうだ。ICT市場調査コンサルティングのMM総研(東京都港区)が、国内の法人パソコン、タブレット調達担当者を対象に実施した「AIパソコンの国内法人市場予測」によると、2023年度に登場したAIパソコンの年間出荷台数は、2028年度に525万台規模まで拡大するという。これは法人向け年間出荷の3分の2に相当する。
AIパソコンの普及シナリオとは?
MM総研は、2025年に米Microsoftの基本ソフト(OS)である「Windows 10」のサポートが終了するため、買い替え需要が加速するとみている。AIパソコンは、小規模なパラメーター数のAIモデルを内部のNPU(ニューラル・プロセシング・ユニット)と呼ばれる最新のチップで処理することによって、クラウドを経由せずにAI機能を利用できるのが特徴だ。
2024年5月にMicrosoftが発表した「Copilot+ PC」は、パソコン内部のデータを検索し、必要なファイルやテキストを探し出す新機能を搭載。MM総研はこれらの諸機能を踏まえ、AIパソコンの普及シナリオを設定した上で、ユーザーのAIとパソコンへの投資動向を踏まえた予測を実施した。
その結果、ホワイトカラーの生産性向上に課題を持つ日本企業は、AIパソコンが得意とする情報検索、整理、要約や翻訳といった機能に着目し、積極的に投資するとした。AIパソコンの普及は大企業がけん引するとみられ、形状別ではモバイルノートブックがけん引役と予想する。2026年度以降は買い替え需要とは別に、市場全体の需要が拡大していくという。
企業の情報システム部門へ、パソコン投資を増やすかを聞くと、パソコンへの投資を実際に増やす企業は、生成AIの活用にも積極的であることが分かった。労働人口の減少に向け、従業員個人の生産性を上げていくことが課題となる企業は、パソコン投資を増やすことに「積極的」「やや積極的」と回答する割合が多く見られた。
一方で、生成AIを活用する企業の特徴を見てみると、AI人材を外部から採用して利用を推進している実態もうかがえる。現時点でのAI活用は人材に依存する部分が大きく、AIパソコンが提供する「誰もがすぐ実践できる」ソリューションが求められていて、AIパソコンの普及ドライバーになると、MM総研は予測している。
調査は日本国内の法人パソコン、タブレット調達担当者(情報システム部門など)を対象に4月に実施。有効回答数は1794人。
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