「デジタル限定クーポン」は消費者に不誠実か? 米国で議論、日本はどうあるべきか:小売りの「マーケティングDX」成功の鍵は(2/5 ページ)
どんなアセットを用意してどんな施策を展開するべきか。重要なポイントを解説する。
そのデジタル化、知らぬ間に顧客を排除していないか?
この議論を始める前に、マーケティングDXが何を実現するものかについて簡単に紹介します。かつて、小売り店におけるマーケティング施策はフィジカル(物理的)なものが中心でした。折り込みチラシ、店頭POP、アイランド陳列、エンド陳列などが挙げられます。
マーケティングDXは、これらの活動にデータをかけ合わせて顧客体験の向上を目指します。「顧客の購買履歴を分析し、パーソナライズしたオファーを提供する」といった施策がその代表格です。
マーケティングDXが進むにつれ、メッセージングの手段もデジタル化してきています。皆さまのスマートフォンには、スーパーやドラッグストアの会員アプリはダウンロードされているでしょうか。この会員アプリもマーケティングDXの一種です。
全員が会員アプリを使ってくれるわけではない
しかしここで一つ、気を付けなければならないことがあります。
流通経済研究所が2023年7月に実施した消費者調査によると、スマートフォン所持者のうち、小売り企業のアプリを利用している人の割合は業態別にドラッグストアが37%、スーパーマーケットが29%、コンビニエンスストアが27%という割合にとどまっています。
筆者の企業が支援しているとある小売り企業では、かなり多彩な会員化・利用率向上施策を行っても、利用率40%をやっと超えるかどうかという状況です。中長期的な視点で会員アプリを推進することに異論はありませんが、アプリではリーチできない顧客も相当数存在することは念頭に置くべきでしょう。
従ってDXの過渡期においては、フィジカルなアプローチの重要性を理解し、バランスを取りながら推進していくことが成功の鍵となります。アプリだけでなく、店頭などオフラインのメッセージング手段も用意しておくべきでしょう。
ところで、米国ではこのオンライン/オフラインのメッセージング手段について激論が交わされていたことをご存じでしょうか。
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