「デジタル限定クーポン」は消費者に不誠実か? 米国で議論、日本はどうあるべきか:小売りの「マーケティングDX」成功の鍵は(4/5 ページ)
どんなアセットを用意してどんな施策を展開するべきか。重要なポイントを解説する。
“あなた”に向けたものになっているか?
小売りにおけるマーケティングDXは、実施した施策の「効果検証」を行う領域は進んでいますが、「施策の実施」におけるDXはまだまだではないでしょうか。
ターゲティングした顧客にメッセージを届けるためには、1to1コミュニケーションの手段が必要です。この手段としては小売り店の会員アプリの他に、自社ECサイト内での広告(オンサイト広告)や、Googleなど自社サイト外での広告(オフサイト広告)があります。
米国では効果・効率の観点から、店頭メディア(インストア広告)が重要視され始めています。
インストア広告の手段としては、サイネージがまず思い浮かびます。しかしサイネージは短期的な売り上げ創出や特定商品のプロモーションには優れた媒体ですが、1to1コミュニケーションは苦手です。顧客のロイヤルティーを高めるのならば、他の手段も模索すべきでしょう。
「アクション」を生み出すメッセージになっているか?
ターゲットに届けるコンテンツは、「(購買などの)アクションを引き出せるか」どうかが重要です。では、どんなコンテンツが望ましいでしょうか。
単に顧客にマッチする商品の広告を見せるだけでは、アクションを引き出すことは難しいでしょう。
なぜなら、食品や消費財の多くは、実際にそれを食べて・使ってみなければその価値が分からない“経験財”といわれるものだからです。これまでに買ったことのない商品を買うということは、消費者にしてみればリスクでありコストに映ることでしょう。そのため、単に商品を認知してもらうだけのコンテンツでは不十分といえます。
さらに情報があふれる現代において、消費者にメッセージを認知してもらうことは非常に難しくなっています。テレビ、Webメディア、SNS、サイネージなど情報のタッチポイントは増え続けており、有効な組み合わせを考えるとキリがありません。
こうした状況下では、実購買データによる「ターゲティング」と「パーソナライズ」、そして有効な「インセンティブ」を掛け合わせることが重要です。
例えば筆者の企業が支援した事例では、ターゲットの過去の購買履歴と相性が良い商品の割り引きオファーを出したところ、オファーを受け取ったターゲット消費者の60%が商品を購入したというものがあります。
ターゲティングしない単なる値引きは、ブランドの価値をいたずらに棄損(きそん)します。それどころか、チェリーピッカー(うまみのある部分だけをとっていく、セール・特売品のみを購入してゆく客)が集まってしまうかもしれません。
届けたい人を特定し、そしてその届けたい人に限定し、特別なオファーを出すことで、アクション(購買)につながる可能性は高まるといえます。そして、そんなオファーを受け取った人の体験価値も向上し、ブランドに対して良いイメージを持つことも期待できるでしょう。
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