羽田空港連絡鉄道の現在と未来 最も近い大田区の行方は?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
現在、羽田空港の航空機発着回数は年間約49万回。空港連絡鉄道は、東京モノレール羽田空港線と京急電鉄空港線があるが、「羽田空港第3ターミナル駅」開業時の年間発着回数は30.3万回だった。発着回数に合わせた空港アクセスの増強として、空港連絡鉄道の増強には現在3つの計画がある。
JR東日本「羽田空港アクセス線」東山手ルート
JR東日本の「羽田空港アクセス線」は、大井埠頭の東京貨物ターミナルと羽田空港の間に新線を建設する。田町駅付近から分岐する貨物線を復活させて東京貨物ターミナルを結ぶ「東山手ルート」と、りんかい線経由で新宿方面を結ぶ「西山手ルート」、りんかい線経由で新木場・千葉方面を結ぶ「臨海部ルート」を計画している。
「東山手ルート」は2023年6月に着工し、2031年度に開業予定だ。当初予定した勾配区間で高輪築堤(ちくてい)の石積が見つかったため、2024年4月に勾配開始地点を100メートル移動すると発表した。しかし2031年度の開業予定に変更はないという。
高輪築堤は、1872年(明治5年)の鉄道開業時に海上につくられた線路の基盤だ。田町駅〜品川駅で高輪ゲートシティを開発するため線路移設工事を実施した際に、鉄道開業時の高輪築堤が発掘された。これ以降、開発と遺構保存は高輪築堤調査・保存等検討委員会の方針に沿い、協議の上で調査・保存・建設が行われている。
東山手ルートは15両編成の列車を1時間当たり8本、1日144本を運行予定だ。東京駅と羽田空港駅を18分で結ぶ。品川駅で京急電鉄線に乗り換えた場合は最短で30分、浜松町駅で東京モノレールに乗り換える場合は最短で26分かかるから、時間短縮効果が高い。
2020年に「国が空港内の地下トンネルや駅の基礎工事を実施」「当初案2倍超の運行本数確保」と報じられた。
「国が空港内の地下トンネルや駅の基礎工事を実施」は大きな支援だ。京急電鉄は穴守稲荷駅から羽田空港第1・第2ターミナル駅までの延伸工事を自社で建設している。京急電鉄は延伸区間に加算運賃を設定して工事費などを調達した。この加算運賃は段階的に引き下げられている。JR東日本は旧貨物線の復活や空港島までのトンネル建設などで費用負担しているため、加算運賃を取り入れる可能性があるけれども、国が空港島内の土木工事を負担してくれたら、加算運賃金額も抑えられる。
「当初案2倍超の運行本数確保」という表現は注意が必要だ。JR東日本は東山手ルートの運行本数を発表しているけれども、東山手ルートは田町駅付近で単線区間が生じており、1時間に8本が限界だろう。一方、国が工事する部分は「西山手ルート」「臨海部ルート」の列車も発着する。もともと羽田空港駅は3ルートぶんを見込んでいたはずだ。
つまり、1時間8本の2倍以上、16本以上は「西山手ルート」「臨海部ルート」も見込んでいるはずだ。仮に羽田空港駅の列車発着本数が1時間当たり16本以上とすれば、「東山手ルート」が8本、残り8本以上を「西山手ルート」「臨海部ルート」で分配すると思われる。当初案の2倍ではなく、当初案通りになるだろう。
しかし、JR東日本の計画によれば羽田空港駅は島型プラットホーム1面の両側に線路を配置する。京急電鉄の羽田空港第1・第2ターミナル駅も同様の形だ。列車の運行は1時間当たり片道12本が限界のようで、後述のように引き上げ線を使って15本とする。
JR東日本は15両編成という長い列車を使う。列車が長くなると、分岐器の通過時間も長くなり、運行間隔が長くなる。それでも国が「16本以上発着」とするならば、こちらも引き上げ線を設置するか、2面4線への拡大を見込んでいるかもしれない。
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