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羽田空港連絡鉄道の現在と未来 最も近い大田区の行方は?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

現在、羽田空港の航空機発着回数は年間約49万回。空港連絡鉄道は、東京モノレール羽田空港線と京急電鉄空港線があるが、「羽田空港第3ターミナル駅」開業時の年間発着回数は30.3万回だった。発着回数に合わせた空港アクセスの増強として、空港連絡鉄道の増強には現在3つの計画がある。

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大田区民の期待を集める「新空港線」

 私は子どもの頃、昭和40年代に羽田空港のある東京都大田区の東急電鉄沿線に住んでいた。当時、羽田空港こと「東京国際空港」は便利な空港ではなかった。池上線や目蒲線(現・東急多摩川線の一部)で蒲田駅まで来ても、そこから羽田空港へ向かう鉄道路線はない。それは今も変わっていない。東京モノレールは遠回りだった。これは大田区に限らず、川崎や横浜方面からも同様に不便だった。

 国鉄(現・JR東日本)と東急電鉄の蒲田駅はつながっているが、京浜蒲田駅(現・京急蒲田駅)は離れており、この区間を重い荷物を持って歩くか、バスやタクシーで乗り継ぐ。その京急電鉄の羽田空港駅は羽田空港島の手前にあり、シャトルバスで連絡していた。

 JR蒲田駅から京急空港線を経由せず、直接、バスやタクシーで羽田空港に向かっても、今度は環状8号線の大渋滞で安心できなかった。こちらは京急蒲田駅の立体交差と、南蒲田交差点の国道15号アンダーパス整備で解消されている。

 羽田空港がある大田区に住んでいても、羽田空港までは心理的に遠い。そんな不便を解消する路線が「新空港線」だ。

 東急電鉄の東急多摩川線を地下化して、京急電鉄大鳥居駅と結ぶ。途中に東急電鉄とJRの蒲田駅、京急電鉄の蒲田駅を経由するため「蒲蒲線」の通称がある。そもそも、2つの蒲田駅を結んで大田区の東西交通を整備するという構想だった。それでは東京都の支援が得られないため、東急電鉄と構想を深度化した。

 東急電鉄側は東急多摩川線、東横線、東京メトロ副都心線を経由し、その先の西武鉄道池袋線、東武鉄道東上線との直通も視野に入れる構想である。一方、京急電鉄側は大鳥居駅で接続する。

 新規建設部分は矢口渡駅〜蒲田駅〜京急電鉄大鳥居駅となる。第1期計画として矢口渡駅〜京急蒲田駅間を2030年代後半に開業する予定だ。整備主体として第三セクターの羽田エアポートラインが設立された。出資比率は大田区が61%、東急電鉄が39%となっている。

 第2期計画は、大鳥居駅の接続方法など未確定要素が大きい。東急電鉄と京急電鉄は軌間が異なるためフリーゲージトレインで直通としたいところだ。しかし、フリーゲージトレインは新幹線と在来線の計画が中止となり、近鉄が自社で採用するため開発中だ。つまり未確定の技術である。始めから直通運転を見込むより、まずは対面乗り換え方式の整備が確実だと思われる。京急空港線直通は「第3期」の課題となるだろう。

 JR東日本の羽田空港アクセス線は2031年に開業する。その頃には京急電鉄も増発される。半年前と比較して、格段に便利になっている。しかしその時点でも、羽田空港がある大田区民のうち、東急電鉄の池上線、東急多摩川線、JR京浜東北線の各沿線の人々が空港連絡鉄道の恩恵を受けていない。空港に近い地域が不便である。新空港線(蒲蒲線)の整備が待ち遠しい。


新空港線の概要 大田区の分断と副都心線方面の羽田空港アクセスを改善する(出典:東京都大田区、新空港線(蒲蒲線)整備促進事業 新空港線(蒲蒲線)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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