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羽田空港連絡鉄道の現在と未来 最も近い大田区の行方は?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
現在、羽田空港の航空機発着回数は年間約49万回。空港連絡鉄道は、東京モノレール羽田空港線と京急電鉄空港線があるが、「羽田空港第3ターミナル駅」開業時の年間発着回数は30.3万回だった。発着回数に合わせた空港アクセスの増強として、空港連絡鉄道の増強には現在3つの計画がある。
京急電鉄空港線羽田空港第1・第2ターミナル駅の引き上げ線
京急電鉄空港線羽田空港第1・第2ターミナル駅は折り返し型の駅で、プラットホームは1面で両側にプラットホームがある。蒲田側の線路に両渡り型の分岐があり、列車が到着するとき、あるいは出発するときのどちらかで分岐を渡るから、一時的に上り線と下り線の両方をふさぐ。この時、2列車の発車と到着は同時にできない。
この問題を解決する方法が「引き上げ線」だ。蒲田側の反対側に線路を延長し引き上げ線をつくる。到着した列車はプラットホームで引き返さずに、いったん引き上げ線に入り、分岐を使って発車用プラットホームに入る。つまり、交差地点を前から後ろに移設する。分岐を使うところは同じだけれども、分岐通過を待つ電車は回送車同士だから、到着する列車や発車する列車の進行を妨げない。
現在、最大で1時間当たり片道12本が発着しているところ、さらに3本を追加して15本にできるという。京急電鉄が2024年5月に公開した経営計画によると、2030年頃に供用開始になる予定だ。
引き上げ線建設工事は2022年8月に始まった。トンネル躯体など鉄道基盤施設は国が整備し、線路やプラットホームは京急電鉄が整備する。これはJR東日本の羽田空港駅と同じ手法だ。京急電鉄は加算運賃を得た自費工事、JR東日本は国負担。そんな不公平の見返りかもしれない。
引き上げ線方式のメリットは到着ホームと出発ホームを分離できること。デメリットがあるとすれば乗り間違いが増えそう。片側を品川方面乗降専用、片側を横浜方面乗降専用とすれば乗り間違いを防ぎやすい(筆者が作図)
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