イオンが手掛けた“謎の百貨店”「ボンベルタ」 密かに姿を消した理由とは?:前編(3/4 ページ)
2024年2月、千葉県成田市のある百貨店が姿を消した。流通大手イオングループが手掛けるものの、知名度は皆無。知る人ぞ知る存在だった同店が、イオンの今後の戦略に示した新たな道筋とは。
郊外型百貨店の挫折
イオンは、ジャスコノア店などで培った郊外型ショッピングセンター、ボンベルタ成田で培った郊外型百貨店を発展させるかたちで、自社総合スーパーと百貨店による2核1モール型商業施設の確立をめざすこととなる。
1994年5月に東北地場大手百貨店「中三」と資本業務提携を締結、1995年にセゾングループ中核企業であった「西武百貨店」と合弁会社を設立するなど、百貨店各社との提携を拡大。1996年4月には宮崎県延岡市の旭化成と地場百貨店連合「YAAC」による百貨店計画を引き継ぐかたちで「ジャスコ」「ボンベルタ橘」を核とする2核1モール型商業施設「延岡ニューシティ」を開業するなど、全国各地に広がりをみせた。
これらの試みのうち、秋田中三やボンベルタ橘延岡ニューシティは地元との調整や狭小な売り場面積を背景に、高級衣料装飾品といった非食品分野に特化した店舗づくりを余儀なくされたこと、西武百貨店との提携も同社経営再建による新店への投資抑制やイオンと競合関係にあるセブン&アイHDとの接近で愛知県岡崎市の1店舗にとどまるなど、いずれも不発に終わった。
その後もイオン系不動産ディベロッパー「ダイヤモンドシティ(現イオンモール)」が、三越との業務提携や新日鉄・阪急系再開発計画を引き継ぐかたちで、2核1モール型商業施設の多店舗化を試みるが、百貨店運営会社の再編や都心旗艦店への経営資源集中、売り場の魅力不足、リーマン・ショック――といった経営環境の変化が災いとなり、短期間で姿を消した。また、ボンベルタ各店舗に関しても店舗老朽化や自社系施設間競合により、成田1店舗を残すのみとなった。
一見失敗のようにみえるイオンによる百貨店への挑戦であるが、イオン系商業施設は着々と百貨店に代わる「ハレの日」に相応しい存在として進化を続けていた。
イオンは2003年11月に同業流通大手のなかでも高級路線を採っていた「マイカル」を完全子会社化。経営破綻が相次ぐ地方百貨店の受け皿として、イオン系商業施設でもオンワードの「23区」「組曲」といった百貨店アパレルがみられるようになった。
また、2006年3月の「オリジン東秀」買収にあわせて、同社のノウハウを生かした総菜新業態を立ち上げ、新店舗では銘菓総菜ともにデパ地下を意識した配置に移行。同年4月のイオン高知を皮切りに提案型衣料品フロア「イオンスタイルストア」を展開するなど、地方百貨店と遜色ないグレードの高いフロアを実現しつつあった。
ダイヤモンドシティは2005年11月の三越との業務提携発表当時、「今まで以上に市場性を加味したSC(ショッピングセンター)の性格付けやモール専門店の構成など、MD(マーチャンダイジング、商品政策)面でのさらなる向上」を挙げており、一連の試みはイオンの高質化に大きく貢献したといえる。
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