生成AIはコミュニケーションをどう変える? ビジネスシーンにこれから起こること:ガートナー デジタル・ワークプレース サミット2024
「ガートナー デジタル・ワークプレース サミット2024」の中から、生成AI活用に関するセッションの内容を3回にわたって紹介する。
コロナ禍でテレワークが普及し、Microsoft TeamsやZoomといったWeb会議ツールの使用が広がった。ビジネスにおけるコミュニケーションの形は、ここ4〜5年で一変した。
しかし、昨今の生成AIの登場は、コミュニケーションそのものを根本から変える可能性がありそうだ。ガートナーのアナリスト、池田武史氏は「もはや人と人ではなく、人とマシン、あるいはマシン間のコミュニケーションに発展する可能性が高い」と指摘する。これから台頭する、生成AI時代の新たなコミュニケーションの形とは。
コミュニケーションを大きく変えるAI
池田氏は、生成AI時代のコミュニケーションの特徴について「デジタルがリアルを拡張する」と表現する。これまでは、言葉の通じる相手と互いに顔を見ながら話すのがコミュニケーションだ、という共通認識があった。
しかし昨今、コミュニケーションを根本から変える可能性を秘めたテクノロジーが数々登場している。例えば「生成AI仮想アシスタント」というテクノロジーは、AIが人間の発言を分析して「もっと気の利いたセリフを言うために、こんなことを話せばいいですよ」などと人間をサポートする技術だ。
従業員の「デジタルツイン」のような技術もある。大規模言語モデル(LLM)を開発するオルツ(東京都港区)は、社員一人一人の「デジタルクローン」を作製し、社員の行動パターンを学ばせることで、社員の業務を一部代行できるようにしている。
このほか、感情を推察する「エモーションAI」、見た目や表現を良く見せる「スマート・エフェクト」などがある。こうしたテクノロジーによってコミュニケーションが拡張されると、会話の相手がAIやアバター、さらには人間が介在せずAIやアバター同士でコミュニケーションを取るといった世界が現実となる可能性があるという。
生成AIに自動化されるコミュニケーションとは?
池田氏によると、ビジネスにおけるコミュニケーションには、ある程度マニュアル化されていて、生成AIによって自動化しやすい種類のものがあるという。例えば「提案や相談」(営業やフィールドサポート、顧客対応、トレーニング)、「指示や助言」(製造や建設、運転、医療、教育)、「議論や交渉」(価格交渉、企画会議の裏付け)、「交流や親睦」(新入社員の教育の一部、子育てや介護などのコミュニケーションの一部)――などが該当する。
社内外におけるコミュニケーションは、ビジネスの根底を支える基本的な動作といえる。テクノロジーを用いてコミュニケーションを拡張することは、顧客や同僚といった会話の相手から、よりよい反応を引き出すために必要な工夫であり、相手に配慮して気持ちよく会話に参加してもらうための工夫でもあるという。
池田氏は「どういったコミュニケーションがデジタルで補強しやすいか、AIで支援できるビジネスの場面を徹底的に調べてほしい」と訴える。
こうしたコミュニケーションにおける変化は、まだ始まったばかりで初期段階といえる。中には、会話の相手が人間ではないことに警戒心を抱く人も一定数いるため、テクノロジーを活用する際には、社内で慎重な評価や検証も必要だと池田氏は指摘する。その上で、「これまでの常識であった人と人とのコミュニケーションから、テクノロジーで強化された人やマシンとのコミュニケーションを、ある程度許容すべき時期が到来している」と説明した。
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