2015年7月27日以前の記事
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テレワーク継続で「社員に優しくしたのに」不満がなくならない……企業が見落としているコト勘違いだらけの「ウェルビーイング経営」(2/2 ページ)

在宅勤務やフレックスタイム制など“従業員に優しい”人事施策や働き方が近年のトレンドである一方で、「副業の解禁やフレックスタイムの導入などを行っているが、不満を解消できない」と悩む企業は少なくないようだ。その影には、誤ったウェルビーイング施策があるかもしれない。

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ウェルビーイングの落とし穴

 このように、日本においても従業員のウェルビーイング向上に力を入れる企業が増えている。しかし、効果的な取り組みができている企業ばかりではない。ウェルビーイング経営に手応えを感じられていない企業は、以下のような「落とし穴」にハマっているケースが多い。

落とし穴(1)根源欲求を満たすだけで終わっている

 従業員のウェルビーイング向上を図る際は、「マズローの欲求階層説」を念頭に置いておきたい。

 米国の心理学者であるアブラハム・マズローは、下図のように、人間の欲求を5段階に分類した。ピラミッドの下に位置する低次の欲求から満たしていくことで、1つずつ上の段階の欲求が生じるようになるというのが、マズローの欲求階層説の考え方だ。

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 ウェルビーイング経営がうまくいかない典型的なパターンが、従業員の生理的欲求や安全の欲求など低次の欲求(根源欲求)を満たすことに終始し、その先にある承認欲求や自己実現の欲求にアプローチできていないことである。これでは、従業員の幸福実現を支援することはできない。

 例えば、定期的なストレスチェックで従業員の健康増進を図っている企業は多いだろう。もちろん重要な取り組みではあるが、それだけで終わっていたら意味がない。健康面や給料面で一定の充足が得られていても、従業員は「会社にどのように貢献をすれば良いのか」と悩んだり、また「日々の頑張りがなかなか認められない」と不満を抱えたりしてしまう。

 従業員の承認欲求や自己実現の欲求まで満たすことができなければ、本当の意味で、ウェルビーイングを実現することはできないということだ。

落とし穴(2)成果に接続できていない

 「ライフスタイルに合わせて柔軟に働きたい」「集中できる時間に働いて生産性を高めたい」といった従業員の要望に寄り添うため、フレックスタイムや時差出勤を導入している企業は多いだろう。しかし、出勤時間がバラバラになることでリアルタイムの情報共有が難しくなり、意思決定に時間がかかるようになるなど、問題が生じるケースも少なくない。

 また、コロナ禍にはリモートワークが一般化したが、5類移行した時期を境に「オフィス回帰」の動きが加速している。リモートワークによってメリットを享受できている企業がある一方で、コミュニケーション頻度が減少したことでミスが増加したり生産性が低下したりするなど、デメリットが上回ってしまっている企業もある。

 ビジネスの成果に接続できていない場合は、どんなウェルビーイング施策も長続きしない

「企業の成果創出」と「個人の欲求充足」を同時に実現する

 このような落とし穴を避けるには、どうしたら良いのだろうか。ウェルビーイング経営を推進する上で肝に銘じておきたいのが、「企業の成果創出」と「個人の欲求充足」を同時に実現することである。いわば「One for All, All for One」の状態だ

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 「All」とは、すなわち企業のことであり、事業成果の最大化を図ることだ。「One」とは、すなわち個人のことであり、個々の従業員の欲求充足を図ることである。

 Allに寄りすぎると「会社の言うことが絶対」という状態に陥り、従業員が疲弊していく。その結果、体調不良者や離職者の増加につながりかねない。一方、Oneに寄りすぎると、従業員の要望だけでなく「わがまま」も受け入れることになってしまい、結果として、会社への求心力が低下し、ミッションやビジョンの実現が困難になる。

 ウェルビーイング経営を推進しようとすると、施策がOneに偏ったものになりがちだ。施策を検討する際は、従業員の要望に寄り添うのはもちろんだが、同時に「その施策は将来の事業成果につながるのか?」という視点を持たなければいけない。

エンゲージメントを高め続け、高次元の個人欲求を充足させる

 ウェルビーイング経営を推進するためには、AllとOneをともに充実させる必要がある。そのポイントは、以下の2つだ。

  • All:エンゲージメントを高め続ける
  • One:高次元の個人欲求を充足させる

 Allを充実させるためには、従業員が会社のビジョンや目指す方向性に共感し、「皆のために頑張ろう」「会社のために貢献したい」と思える状態をつくらなければいけない。そのためには、エンゲージメントを高め続けることが重要である。

 Oneを充実させるためには、低次元の個人欲求を満たすだけでなく、従業員の自己実現に向けてキャリア開発を行うなど、高次元の個人欲求までを充足させることが大切だ。

 上述の通り、昨今はリモートワークが見直され、「オフィス回帰」をする企業が増えているが、リモートワークという働き方自体に問題があるわけではない。エンゲージメントが高い状態にあり、個々の従業員の自己実現に向けたアプローチができていれば、オフィスに出社するか否かにかかわらず、成果を創出できるはずである。

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おわりに

 ウェルビーイング経営を推進するためには、企業の成果創出(All)と個人の欲求充足(One)の同時実現を目指さなければいけない。Allを充実させるポイントが「エンゲージメントを高め続けること」であり、Oneを充実させるポイントが「高次元の個人欲求を充足させること」である。

 次回は、One(個人の欲求充足)をテーマにして、高次元の個人欲求を充足させるための取り組みについて解説したい。

著者プロフィール

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岩崎健太 株式会社リンクアンドモチベーション 組織人事コンサルタント

早稲田大学大学院卒業後、新卒でリンクアンドモチベーションに入社。

組織人事コンサルタントとして、中小・成長ベンチャー企業を中心に経営理念の策定や浸透、人事制度設計などを支援。

現在は、リンクアンドモチベーショングループ13社のブランディング部門のリーダーを務める。


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