【独自】大塚食品の報復人事訴訟 「不正告発後、仕事を取り上げられ孤立」告訴人インタビュー:働き方の「今」を知る(3/4 ページ)
「ボンカレー」や「ジャワティ」などの製造販売を手掛ける大塚食品。このほど同社工場で品質管理を担当していた男性A氏が、内部通報をしたことにより会社から異動を命じられたうえ理不尽な環境での勤務を強いられ、うつ病を発症したなどとして、会社に慰謝料などを求め地裁に提訴した。これまでまだ明かされてない大塚食品の内情や、A氏の思いも踏まえた独自インタビューをお届けする。
【独自】大塚食品の回答は?
筆者は一連の事案に関して、大塚食品側にも文書にて取材を依頼した。同社側からは詳細な回答が寄せられたので、その一部をご紹介したい。
「本件は、内部通報・公益通報に対する報復人事ではないか」との質問に対して
大塚食品の回答: 当社では内部通報窓口を設置し、通報者や通報に関する情報を厳重に管理した上で、通報者が不利益を被らないように適切に対応を行っており、内部通報を理由に、違法な人事異動や異動後の取り扱いを行ったことは一切ないことを改めてお伝えさせていただきます。
人事異動につきましても、人材育成やキャリア開発につなげること、および組織の活性化を図ることを主な目的としており、ご質問にありますようなことはございません。
「内部通報で言及された、原材料への異物混入疑惑にまつわる製品の安全性」について
大塚食品の回答: 粉砕した原材料の製造前検査で異物が発見され、当該原材料はその時点で全て適切に廃棄しておりますので、食品衛生法に違反するものではありません。また、委託した外部検査機関による検査結果から、当時使用していたポリ袋の安全性も確認済みとなっております。
当社製品は、原材料の受け入れから製品の試験まで適切に行っており、法令順守は勿論のこと、製品の安全性にも一切問題がないことを改めてお伝え申し上げます。仮に、何らか問題が生じた場合には、速やかに開示するのが当社の方針です。
「報道されている、A氏の異動後の監視体制など異様な就業環境」について
大塚食品の回答: 前提として不正確な報道内容の引用や一方的な認識、見解が多く含まれており、事実と異なる、あるいは、反論し得るものではありますが、係争中の案件であることから回答を控えさせていただきます。
当社といたしましては、現在係属中の訴訟において、内部通報に係る案件に対する当社の対応に何ら問題がなかったこと、内部通報に対する報復として違法な人事異動や異動後の取扱いは一切行っていないことなど、当社の主張を法廷にて行ってまいる所存です。
【独自】大塚食品の回答に対する、A氏の見解
これら大塚食品側の回答に対して、A氏は次のような見解を示した。
「会社は完全に逃げていると感じます。『何らか問題が生じた場合には、速やかに開示するのが当社の方針です』とありますが、中にいた者からしては、何を言っているのか? と思います。『隠蔽体質を隠蔽している』ことに他なりません」
「原材料も廃棄したので安心しろと言っていますが、異物はどこから出てきたのかまだ特定できていない状況です。ポリ袋自体も10年くらい使っていて、どの過程で異物混入したか分からないし、発生源も特定できていない。外部検査機関に検査を出して問題ないとなったことが根拠かもしれませんが、そもそもどんな内容の検査をやったのか、社内にも開示してないので、本当に試験を依頼したのか。内容が適正かもわからないのです。10年分の安全を担保できるのでしょうか」
A氏は最後に「とにかく、グループ全体の問題です。消費者の皆さんに申し訳ない」と語った。筆者も今後の裁判の進展を見守ると共に、こちらでも随時報告していく考えだ。
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