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日本語教師はなぜスパイだと疑われたか ツッコミどころ満載であるが、ビジネスパーソンが注意すべき行動世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

ベラルーシで日本人が拘束されていたことが現地のニュース番組で報じられた。スパイとして活動したと疑われており、過去に連絡を取った日本の企業経営者も諜報員だとされている。海外とやりとりする場合はこういったことに巻き込まれるリスクもある。注意が必要だ。

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海外での「写真撮影」には注意

 男性は、ビジネス的にも大変な迷惑を被っていると述べていた。それもそのはずだ。国内外でビジネスを展開している経営者が、海外在住の元身内が拘束されて、そのスマホから昔のやりとりが見つかったからといって、突然「軍の諜報員」とされてしまうのである。

 もっとも、元身内でなかったとしても、海外で暮らす知り合いにビジネスチャンスを見据えて現地の事情を聞くだけでも、同じような事態に直面するリスクはある。野心的なビジネスパーソンほど危険にさらされかねない。

 それが国営放送のニュースとして、YouTubeで全世界に配信されるのだから、スパイに「でっち上げられた」側は悲惨だ。しかも番組側から確認のための取材も来ていないので、反論のしようもない。また、ベラルーシの同盟国などに訪問したら、「軍の諜報員」として拘束されてしまう可能性すらある。

 特に、日本や欧米と価値観を共有しないような国が絡むと、そのリスクはさらに高くなるだろう。ちなみに、ベラルーシはロシアと国境を接し、旧ソ連諸国の中でも有数の親ロシア国家だ。情報機関が協力をしながら両国の国益のために動いているため、ロシアの思惑が背後にある可能性も考えられる。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、日本はロシアに対して厳しい姿勢を示しており、経済制裁も科している。言うまでもないが、北方領土を巡る問題も抱えている。


ロシアのように、友好的ではない国にはリスクがある(画像提供:ゲッティイメージズ)

 今回の件は、仕事で海外に行くビジネスパーソンだけでなく、一般の旅行者にも教訓となるだろう。特に注意が必要なのは、写真撮影である。

 特に日本と友好関係のないような国では、どこに政府機関や軍事関係の建物があるか分からない。街中で写真撮影をしていたら、たまたま重要施設が映り込んでしまい、スパイ容疑などで拘束されてしまう可能性すらある。ガイドブックに載っている観光地なら問題ないだろうが、それ以外ではむやみやたらに写真を撮るのは控えた方がいい。

 これまでなら、もし写真撮影が問題になったとしても、その場で写真を消せば許してもらえることもあったが、最近は自動でクラウドサービスに同期されてしまうこともあるので注意が必要だ。大抵の場合、そうしたクラウドのサーバは国外にあることが多いため、写真を撮影した瞬間に海外に持ち出してしまうことになる。西側諸国なら問題になることは少ないと思うが、そうではない敵対的な国ではそれを根拠にスパイ扱いされてしまう可能性も否定できない。

 中西氏が裏で日本などの情報組織とやりとりしていたのかは現時点では分からない。だがここまで見てきた通り、西側諸国と対立しているような国では、情報共有や写真撮影なども気を付ける必要があるということだ。拘束されたら、スマホやPCの中身まで過去にさかのぼって見られてしまうのである。

 そうしたことを意識しておかないと、スパイ扱いされてプロパガンダ目的で拘束されてしまう可能性もある。ビジネスであっても、海外とやりとりする際には注意が必要だ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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