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「自分で考え、動ける社員」を作る──リコーは何をしているのか(2/3 ページ)

「リコーは2020年にOAメーカーからデジタルサービスの会社になると宣言している」――リコーの長久良子CHROは、自社の人的資本戦略に変革が必要になった理由をこのように話す。リコーが2020年から進めてきた、自律的に考えて提案できる社員を育む人的資本戦略と、見えてきた課題感とはどのようなものか。

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リコー式ジョブ型人事制度で見えてきた課題

 デジタルサービスの会社への変革を成し遂げるため、リコーでは「リコー式ジョブ型人事制度」を2022年4月に導入した。

 デジタルサービス会社への変革に求められる人事制度について経営全体で話し合った結果、次のような課題を抱えていることが見えてきた。

変革に際しての課題

  • 高い管理職比率
  • 年功序列の配置と登用
  • 若手のやる気減退

 国内の製造業の多くに見られるように、リコーでも50代以上の管理職が圧倒的に多かった。これは年功序列や過去の実績や評価がそのまま積み上がったことによる配置だが、若手はやる気を失ってしまう。「あの優秀な先輩が、まだ役職についていないのだから、自分はいつになるのだろう」と不安に感じ、離職につながってしまうのだ。

 「過去の実績ではなく、現在の実力や意欲によって抜擢(てき)され、活躍できるようになることこそ、新しい事業にマッチする」と考え、難しい仕事へのチャレンジや会社への貢献度が高い人に報いるような人事制度の策定を目指した。

 とはいえ、そのような若手を昇格させるには、そのポジションにいた人を降格させる必要がある。ポジションに就いているという状況は、ある意味で「既得権益」だ。降格させるのはなかなか難しい。

 そこで、柔軟なポジションオフ(降格)やポジションオン(昇格)を行えるようジョブ型の人事制度を導入することになった。

ジョブ型人事制度導入の目的
抱えている3つの課題と、それらを解決して実現したいこと

 一般にジョブ型では、仕事やポジションのグレードに対して定められた報酬が与えられる。そのため、降格すれば受け取る報酬額は少なくなる。

 しかし、リコー式ジョブ型では、ポジションオン/オフするごとに給与をアップダウンさせるのではなく、降格した人に対して3年の猶予期間を設け、その間に自律的チャレンジ、つまりポストへの再挑戦の機会を与えている。これにより、ポジションオン/オフのしやすいシステムとなった。

 ジョブ型人事制度の導入から3年目を迎え、マネジャーやエキスパートというポジションで30代の比率が2.5%から10.9%にまでアップした。

 また、非管理職から管理職への新規登用が拡大し、ポジションオフされた人が管理職に戻るための再チャレンジも行われている。自分が降格された理由に納得しているからこそ、再チャレンジという前向きな姿勢を取れているというわけだ。

 それぞれのポジションに就くために何が求められるのかというジョブディスクリプションを公開することで、非管理職(一般層)の若手でも、目指すポジションに向けて具体的な行動を取りやすくなった。それがさらにスキルアップへとつながっている。

 3年目の現時点での課題は、まだカルチャーとして根付いていないという点だ。また柔軟なポジションオフを行えるようにしたものの、実際に行われている数は少ないという。「関係者の再評価を強化していきたい」と長久氏は語気を強める。

ジョブ型導入後の現状と課題
課題はあるものの、現在のところ得られた効果のほうが大きい

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