「はやぶさ」「こまち」はなぜ連結して走るのか 欠点を上回る分割併合運転のメリット:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
9月19日、東北新幹線「はやぶさ6号」と秋田新幹線「こまち6号」が走行中に期せずして分離。幸いにも自動的にブレーキが作動して両方とも停車した。事故の原因は調査中。そもそもなぜ「はやぶさ」と「こまち」、「やまびこ」と「つばさ」は連結して走っているのか。連結して走る利点と欠点を見ていく。
併結運転の利点
そもそもなぜ「はやぶさ」と「こまち」、「やまびこ」と「つばさ」は連結して走っているのか。そんな疑問をお持ちかもしれない。別々に走れば分離しなかった。しかし、連結して走る理由がいくつかある。
1つは、東京〜大宮間のダイヤが過密になっているからだ。
東京〜大宮間は東北新幹線のほか、上越新幹線、北陸新幹線の列車が乗り入れる。時刻表サイトや市販の時刻表は路線ごとに分かれているので、東京駅発車時刻をまとめた。
上の表は臨時列車の発着枠も含めているから、毎日全ての列車が走るわけではないけれども、最繁忙期は最大でこれだけの列車が発車する。発車時刻がほとんどの時間帯で4分間隔となっている。長距離列車だけの時刻表と思えないほどの過密ダイヤだ。通勤路線の朝ラッシュ時に近い。
ちなみに東海道新幹線が実現した「のぞみ12本ダイヤ」で1時間当たりの本数は、のぞみ12本、ひかり2本、こだま2本で合計16本。3分間隔の時間帯もある。これは全ての列車が16両編成で同じ性能に統一されているからできた。
JR東日本は新旧の車両が混在し、加速性能もわずかながら異なる。JR東海の乗り場は6線あるけれど、JR東日本は4線だ。このような環境の差でJR東日本は4分間隔を実現している。素晴らしい運用能力だ。しかし現在の車両や設備では、これが限界といえそうだ。同じ時刻表を見ると、臨時列車のいくつかは上野駅始発となっている。東京駅が混雑しているため、東京駅を発着できない。
この発着枠の制限があるため、「こまち」「つばさ」を全て単独で運用できない。「つばさ」は単体運用があるけれども「こまち」は常に「はやぶさ」と併結する。併結しているおかげで「こまち」は乗り換えなしで東京〜秋田間を運行できる。
もう1つの理由は、運転士を効率よく運用できるためだ。「はやぶさ」「こまち」を例にすると、東京〜盛岡間はひとりの運転士が乗務する。仙台駅で交代する場合が多いけれども、「はやぶさ」10両、「こまち」7両を合わせて17両編成をひとりで運転する。「こまち」の運転士は盛岡〜秋田間だけ往復すればいい。
また需要と供給の調整ができるという利点もある。東北新幹線の場合、東京〜仙台間の需要が最も多く、北へ行くほど乗客が少ない。「はやぶさ」10両編成で十分。あるいは少し足りない。この区間に7両の「こまち」「つばさ」では足りない。そこで、17両編成で東京〜仙台間の需要を吸収しつつ、秋田、山形、新函館北斗方面の列車を分割する。
時刻表を見ると、途中の駅で分割しないまま、17両編成で運行する列車もある。それだけ需要が大きい時間帯といえる。「やまびこ」「はやぶさ」単体で17両編成の列車を見つけたときは、「こまち」「つばさ」用の車両を選ぶと、普通車でも4列座席になる。車体はひとまわり小さくなるけれども、窮屈な「3列の中央」がない。
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