美容室の倒産が増えているのに、なぜ「特化型店」は好調なのか(2/5 ページ)
帝国データバンクの発表によれば、2024年に発生した美容室の倒産は8月までに139件に達した。年間最多だった2019年(166件)を大きく上回る勢いで推移している。そうした中、特化型の店舗が増えていて……。
低価格の白髪染めを提供し、130店舗超え
「ヘアカラー専門店fufu(以下、fufu)」は、2014年に創業したFast Beauty(ファストビューティ)社(東京都港区)が運営するヘアカラー専門の美容室だ。同年10月に東京・中野に1号店をオープンし、2024年9月現在は全国に130店舗以上を運営している。
同社の取締役CSO 原田悠氏は、ビジネスモデルの着眼点は「白髪染め」だったと話す。同社がターゲットとする30代後半以降の女性は、約3カ月に1回のカットに対して、白髪染めは月に1回が通常だ。その際、既存の美容室で染めるのは金銭的にも時間的にも負担が大きい。かといって自宅で染めるのは、手間がかかる上にキレイに染まりづらい。
そうした既存サービスのネガティブポイントに着目し、美容師のカラーを低価格、短時間で提供するヘアカラー専門店を開業。リタッチ(伸びてきた根元部分だけを染めること)は3080円(初回のみ1980円)で、全体カラーでも60分以内で完了する。ブリーチを使用したハイトーンカラー(明るい色に染めること)など時間がかかるメニューは提供していない。
筆者がfufuを利用した際、一連の作業が徹底して効率化されている点に驚いた。スタイリストが担当するのはカラー剤の塗布からシャンプーまで。ブローはセルフとなる。施術・待機・ブローのスペースが分けられており、顧客の動線もスムーズに設計されていた。
この効率化を支えているのが自社開発の予約管理システムで、一切のムダを省いて運営するためのアルゴリズムが肝になっているという。
予約は自社アプリ、美容室の検索・予約サイト、電話の3パターンで受け付けているが、すべてが1つのシステムに連携され、リアルタイムで予約枠が管理される。システムが自動的に予約枠を判断し、予約を入れることで効率的な運営を実現しているのだ。
「当社のビジネスモデルに似たヘアカラー専門店は増えていますが、10年かけて積み上げてきたシステムの精度は真似しづらいでしょう。当社では効率化している分、カラー剤などの原料にはむしろコストをかけていて、それが顧客満足度につながっていると思います」(原田氏)
メニューを限定して全国に規模を拡大していることから、管理や教育の仕組みを整えやすい点も差別化ポイントになっている。カットと比べてカラーの施術はハードルが低いため、出産・育児などで一度現場を離れた美容師も採用しやすいそうだ。
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