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海外ゲーム『ゴースト・オブ・ツシマ』はなぜ、“史実と違っても”受け入れられたのか?:エンタメ×ビジネスを科学する(2/5 ページ)
歴史をテーマとしたゲームに付いて回るのが「史実との整合性」であり、しばしば議論の的となっている。
史実と創作の境界線
ゴースト・オブ・ツシマは「元寇」を取り扱った珍しいゲームである。13世紀末の文永の役を題材に、元王朝と高麗が対馬へ侵攻した時代を舞台としたオープンワールドアクションRPGだ。プレーヤーは対馬の侍「境井仁」となり、故郷を守るため元軍に挑むという構成である。
侍の道に反するような、非道な戦い方に手を染めても対馬の民を守ろうとする境井仁の葛藤が巧みに描かれた作品だが、本媒体でゲーム本編の魅力に触れるのはここまでにしておこう。
本ゲームは時代考証に基づく精緻な武具や建造物、水墨画を思わせる美しい自然描写に加え、時代劇のような演出が国内外で高く評価されている。
元寇という日本では誰もが知る史実を扱い、高い評価を得た作品であるが、史実に忠実であったかというとそうではない。
例えば、ストーリーの根幹となる戦の描写は大幅に脚色されている。さらに、ゲームの舞台となる対馬の地形や自然環境についても、ゲームプレーの快適性を優先し、森林を減らして広大な草原を配置するなど、当時の対馬とは異なる描写が随所に見られる。
ただ、これらの脚色について日本国内で「史実と違う!」と大きな批判対象にはなっていない。日本をテーマにした海外製のゲームが史実と違うとして、たびたび”炎上”するにもかかわらずである。
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