NECは生成AIでどう変わる? トランプ政権誕生の影響は? 森田社長に聞いた(2/2 ページ)
2024年、生成AIは企業の業務ツールへの導入が進んだ。2025年はどう変わるのか。NEC森田隆之社長に、生成AI開発の狙いや、トランプ政権誕生の影響など今後の見通しを聞いた。
トランプ政権誕生の影響は?
――航空・宇宙・防衛事業では、2025年度までに累計で1200人増員する計画を立てています。2026年度以降も増加していくのでしょうか。
防衛事業の在り方は、この1〜2年で次元が変わってきています。人員1200人についても足元で既に逼迫(ひっぱく)感もあり、府中事業所(東京都府中市)や周辺施設の増設を進めています。今までのような規模ではないですが、継続的に人材が必要になると思っています。
政権の状態を含めて見通しがつきにくくはありますが、地政学的な状況は変わりません。中国・米国の位置付けや、中東・ウクライナなども先が見通せない状況です。いずれの問題も短期間で解決するものではないでしょう。
日本が防衛力を含めて自身で国を守るための投資は必要になってくると思います。特に、NECが保有しているサイバーセキュリティ、宇宙などの先進的な技術領域についても、国際的な経済安全保障の領域において、交渉力を持つ意味で重要だと思います。
量子暗号や量子センサーなどの技術領域も同じです。世界の中でリードする技術を確保することは、自国を守る意味でも非常に重要であり、国際的な平和にも貢献できると思っています。この領域は長期的に伸びていく、伸ばしていく領域だと考えています。
――米大統領選ではトランプが勝ちました。NECのビジネスへの影響をどう考えていますか。
米国政府からは当社の生体認証の技術について高い関心をいただいており、問い合わせをいただくこともあります。最初は、トランプ政権時のハガティ駐日米国大使でした。その後のバイデン政権のエマニュエル駐日米国大使も、引き続き高い関心とサポートをいただいています。同じくバイデン政権のブリンケン国務長官も当社を訪問し、協力をいただいています。
海底ケーブルについても高い関心をいただいています。今の地政学の状況が変わらない中では、テクノロジーの領域におけるわれわれのような日本のテクノロジー会社の重要性は変わらないと思っています。個々の領域については、突然の為替変動や半導体関連などの輸出入の規制で間接的な影響は受けるかもしれませんが、大きな流れとしてはわれわれのコア事業は、変わらず順調だと楽観視しています。
宇宙開発の重要性
――米中対立など経済安全保障を踏まえて、海底ケーブル事業をどのように考えていますか。
海底ケーブルはデジタルインフラに欠かせない基盤です。特に日本は海で囲まれているので、海外からの接続を考えた場合、今99%は海底ケーブルに依存しています。これからは徐々にこの比率が下がっていき、5%程度は衛星通信になると予想しています。
衛星通信と海底ケーブルの2つが、海外との接続性を支えるものになります。特に今の世の中、全てのものがコンピュータ、あるいはネットワークでつながっています。その中で、サイバーセキュリティの問題が重要になると思っています。その意味では「国のインフラの神経系」といわれるところを、海底ケーブルと若干の衛星が補完して守っている形です。この部分の重要性は通信というより、国のさまざまな基幹インフラを守っていくために非常に重要なものです。
その重要性は、これまで以上に上がってきています。ネットワーク全体を考えた時、米中に限らず全てがグローバルでつながっています。その中でインド太平洋におけるネットワークの重要性は、今後ますます高まると思っています。
――海底ケーブルや、今後伸びると予想される衛星通信面におけるネットワーク事業について、今後の戦略を教えてください。
多数の人工衛星を特定の軌道に打ち上げ、一体的に機能させる衛星コンステレーション計画が日本政府内で検討が進んでいると理解しています。この領域でも衛星間光通信など通信におけるわれわれの技術が非常に有用だと思っています。
NECは宇宙の領域について、途絶えることなく研究開発を続けてきました。衛星と海底ケーブルの通信については、デジタルインフラの神経網だと捉えて取り組んでいきたいと考えています。この分野においてはロケット、衛星運用、ケーブル敷設などが必要なため、ハードウェアを含めてエンドトゥーエンド(上流から下流まで)で対応していかなければなりません。
――森田社長は2025年度以降の次期中期計画の策定に関わるだけでなく、実行についてもトップとして継続していく考えなのでしょうか。
当社は指名委員会等設置会社であり、私の任期は1年ごとになります。社長を継続するかしないかは委員会が決めることになります。私としては今あることをしっかり全うしていきます。2025年度以降もNECは当然続いていきますので、引き継ぎを含めて体制を整えていくことも私の責任の一つだと思っています。
――中長期でのNECのビジョンを教えてください。
この数年でNECの姿はクリアになってきました。企業には国籍があると考えています。NECの強みの一つは研究開発です。もう一つは安全保障に資する先端技術領域である宇宙・防衛や海底ケーブルの領域で培われた技術と、その相乗効果を出せるサイバーセキュリティといったITサービスの事業展開だと考えています。
この形はうまく機能すると思います。世界的な視点で見ても日本のテクノロジー会社として期待が集まる姿になっていると考えています。この形を強化していくことで大きな絵が描けると思っています。
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