「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか:差を広げた“判断”の差(3/7 ページ)
牛丼の価格戦争――。この言葉を目にすると「懐かしいなあ」と感じる人も多いかもしれないが、いまや「500円時代」の足音が聞こえてきた、といったところでしょうか。牛丼チェーン3社の業績を見ると、明暗がわかれているようで。
「低価格なのに高収益」が、BSEで一転
この数字に大きな変化をもたらしたのが、2003年末に発生した狂牛病(以下、BSE)でした。米国でBSE感染が確認された牛が見つかったことで、世界的に牛肉の安全性への懸念が広がるとともに、日本政府も米国産牛肉の輸入を全面的に停止したのです。
当然のことながら、これは日本の牛丼ビジネスにも大きな影響を与えました。BSEの影響で、2004年度の吉野家HD、および吉野家単体の営業利益率はそれぞれ-1.0%と-1.9%と、これまでの好調ぶりから一転、マイナスとなりました。松屋フーズHDもマイナスにこそならなかったものの、4.9%と大きく数字を落としました。
このタイミングで唯一数字を落とさなかったのが、すき家のゼンショーHDです。事業を多角化していたこともあったためか、2004年度の営業利益率は3.4%と、BSE以前とそこまで大きく変化することはありませんでした。牛丼3社のなかで、一番痛手が少なく、うまくBSEの時期を乗り切ったといえるかもしれません。
BSEは営業利益だけでなく、CCCにも大きな影響を与えました。2000年〜04年の価格戦争の際は好調だったCCCが、BSEを機に徐々に悪化し始めました。吉野家HDはビジネス形態が変わったため、一概にBSEのみの影響とは言い切れませんが、牛丼ビジネスのみの松屋フーズHDのCCCも悪化していることから、やはりBSEは牛丼業界にとって大きな影響を及ぼしたといって良いでしょう。
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