「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか:差を広げた“判断”の差(7/7 ページ)
牛丼の価格戦争――。この言葉を目にすると「懐かしいなあ」と感じる人も多いかもしれないが、いまや「500円時代」の足音が聞こえてきた、といったところでしょうか。牛丼チェーン3社の業績を見ると、明暗がわかれているようで。
こだわりポイントをどこに置くかの判断が重要
このように、時代や環境に合わせられるかどうかで、企業の将来は大きく変わってきます。個人的には「持つべきこだわりポイントをどこに置くか」が大事だと感じます。
今回紹介した牛丼3社の中で、特に大事なのはお客さんに選ばれる味と価格であったと考えています。BSEが発生した当時、吉野家の「米国産にこだわる」という姿勢は評価されていましたが、それまでの手法に固執したがために、BSE以前のような収益力を取り戻すことができなくなり、結果として味やサービス、価格の面で劣後するという残念な結果になったと思います。
オーストラリア産牛肉の輸入を早期に決め、価格でも大きく勝負に出たゼンショーHDがいまの業績につながっていることを考えると、こだわるポイントを間違えると、長期的に企業価値に大きく差がついてしまうといえるのではないでしょうか。
時代に合わせた経営が重要であることは間違いありません。牛丼業界において、これまでは味と価格の両面で経営力が試され、その結果が如実に数字に現れたと感じます。しかし、今後は「人」が企業の行く末を大きく左右すると考えています。
いくら店舗があっても、そこで働く人がいなければオペレーションを回すことはできません。最近も無理なオペレーションを組んで働かせていたことが取りざたされていましたが、今後はより多くの人が「この企業で働いてみたい」と思えるような環境をつくれるかが肝となるでしょう。
私は、そうした環境づくりが、企業間の新たな「競争の軸」となってくると考えています。そして、それに対処できるか否かで、将来の順位が入れ替わるかもしれません。これからの時代に合わせた経営ができる企業はどこなのか、これからも価格とともに注視していきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方
半導体大手のキオクシアHDが、株式上場を遅らせると発表しました。キオクシアの旧社名は「東芝メモリ」。「金の卵」ともいえる事業を、なぜ東芝は手放したのでしょうか。
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。
なぜ「ライス残し」で炎上したのか? 家系ラーメン店が抱える深いジレンマ
無料サービスで希望したライスを食べずに帰った客に対してラーメン店が投稿した内容が話題になっている。なぜ店側は、ここまで怒りをあらわにしたのだろうか。
なぜ、すき家は“ディストピア容器”を提供するのか 「並盛430円」のスゴさが見えてきた
すき家が一部店舗で導入している容器が「ディストピア」のようだと、たたいている人がいる。だが1000円以下で食べられる牛丼チェーンに対して皮肉を言うことは、全てわれわれに特大ブーメランになって返ってきているのだ。どういうことかというと……。
バーガーキングがまたやらかした なぜマクドナルドを“イジる”のか
バーガーキングがまたやらからしている。広告を使って、マクドナルドをイジっているのだ。過去をさかのぼると、バーガーキングは絶対王者マックを何度もイジっているわけだが、なぜこのような行動をとるのか。海外に目を向けても同じようなことをしていて……。
