キリン「晴れ風」が絶好調 “ビール好き”以外をどうやって取り込んだ?(2/2 ページ)
キリンビールが4月に発売した17年ぶりのスタンダードビールの新ブランド「晴れ風」の勢いが止まらない。11月13日には年間販売が500万ケースを突破した。なぜここまで売れたのか。同社ビール類カテゴリー戦略担当の小澤啓介氏に話を聞いた。
目黒蓮、今田美桜 ファンが自発的に広めてくれる
この製品のアンバサダーとしてタレントの内村光良、天海祐希、目黒蓮、今田美桜の4人を起用した。発売前から、商品名を彼らの写真を使って巧みに隠すなど興味を引く宣伝活動をしてきたという。「新しい価値をお届けできる良い新ビールができたという自信があったので、発売までに顧客の期待をいかにして高められるかを考えた結果です」
期待値を高めるということは、評価のハードルを上げることになる。そのリスクを負ったということかと聞くと、小澤氏は「その通りです」と、自信に満ちた表情で言い切った。
「4人のタレントの方々が出ています。老若男女を狙っていて、皆さんが自分向けの商品だと感じてもらえると思います。若年層はテレビを見ない人も多いので、商品やブランドを認知してもらうため、目黒さんと今田さんが出演するインスタグラム・TikTok専用動画も制作しました」
実際、4人を起用した効果は表れている。「購入されたお客さまを分析しても、若者層のみならず需要ボリューム層となる40〜50代を含め幅広い層に購入いただいています」と話す。タレント起用は狙い通りの効果を生んだ。
インスタでも面白い事例が発生した。目黒蓮は、とあるファッションブランドのアンバサダーもしているが、彼のファンがそのブランドと晴れ風がコラボしているかのような写真をアップしたのだ。ファンが自発的に、そして結果的に晴れ風を拡散していることになる。「想定はしていなかった」そうだが、これはSNS時代ならではの現象だ。
「営業チームは『新しいお客さまをビール業界に取り込みます』と意気込みました。スーパーを始めとする流通の担当者と商談し、良い売り場を確保してもらいました。商品を広いスペースに平積みで置いてもらえるかどうかも重要です」
幅広い知見が生きる
小澤氏は2015年に同社に入社した。商品開発では晴れ風が2つ目となる。入社から6、7年は物流を担当。そこから、現在のマーケティング部に所属している。晴れ風の前は、缶チューハイの「キリン・ザ・ストロング」を「麒麟特製」としてリブランディングするプロジェクトに関わり、2023年夏から晴れ風の担当になった。
歴史ある商品であっても新商品であっても、新規顧客を開拓した上で、従来のファンを満足させなければ、その商品の未来はない。小澤氏は開発から物流、マーケティングまで幅広い知見をもっているからこそ、晴れ風をヒットさせることができたと言えそうだ。
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