松井証券×JCBが挑むクレカ積立 赤字は避けられないのに、なぜ勝負するのか:「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)
投資信託のクレカ積立市場に、ネット証券最後発の松井証券と、大手カード会社で唯一参入していなかったJCBが参入する。「採算がとれない」といわれている市場に、なぜ参入したのか。背景を取材すると……。
“永遠に赤字”から一転、販促投資と割り切り
「やったとしても半永久的に赤字になってしまい、長続きしない」。松井証券の和里田聰社長は2021年のインタビューで、クレカ積立への参入について否定的な見解を示していた。それが一転、参入を決めた理由は何か。同社マーケティング部長の増田雄亮氏は「特に新NISA開始以降、お客さまからの問い合わせが急増した。ニーズに応える意味合いで、実現を決めた」と説明する。
クレカ積立が収益面で厳しいのは、仕組み上の制約がある。顧客が投資信託を購入する際、証券会社は加盟店としてカード会社に手数料を支払う必要がある。通常の加盟店手数料は3%程度だが、投資信託ビジネスは薄利多売。そのため手数料は大幅な引き下げが必須となる。カード会社(イシュア)は加盟店手数料の中から、ネットワーク利用コストなどの運営コストを支払い、残りから顧客還元を行う。顧客に1%のポイントを還元するのは、証券会社、カード会社ともに厳しい。
「やはりコストは一定かかる」と増田氏。しかし同社は今回の取り組みを「広告宣伝費」と位置付け、JCBとのシナジー効果も含めて投資回収を図る方針に転換した。カード会社側も「一般的には、そこだけ切り取ってみると、採算面で厳しい部分があった」(JCBの山氏)としながらも、「お客さまのニーズが高まってきた中で、なんとか実現したい」と判断したという。
両社とも単体での収益性は求めない。その代わりに、クレカ積立を入り口とした新規顧客の開拓や、既存顧客との取引拡大を目指す。後発ゆえの課題を、販促投資と割り切ることで克服する戦略だ。
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