なぜ富士通「Uvance」は生まれたのか サステナビリティに注力する強みに迫る:変革の旗手たち〜DXが描く未来像〜(2/2 ページ)
DXブランドが乱立する中、DXだけでなくSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)も打ち出し、着実に成長してきたのが、富士通が2021年に立ち上げた「Fujitsu Uvance」だ。なぜSXを掲げ続けているのか。ユーバンスの事業戦略責任者に聞いた。
国際ルールメーカーとしての強み
――サステナビリティに向けた異業種連携として、ユーバンスや富士通ではどんな取り組みをしているのでしょうか。
WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)という、世界200社以上の経営者が集まり、新たなルールを策定する国際環境会議があるのですが、当社はその分科会でトランスポーテーション(交通)領域における脱炭素化の実証や、カーボンフットプリントを測る基準の策定や実証に、主導的に取り組んでいます。
国際的なルール作りとしては、他のことにも積極的に取り組んでいます。欧州起点で始まっているデータ流通の仕組みである「データスペース」の代表的な事例である、欧州自動車業界中心のCatena-X(カテナX)の枠組み検討にも日本企業として参画しています。
日本も同様の施策として、経済産業省が「ウラノス・エコシステム」(信頼性のある自由なデータ流通の実現に向け、複数のシステムを連携させ、企業・業界を横断したデータの利活用を促進することで、データ・システム・ビジネス連携を具体的に推進し、官民協調で企業・産業競争力強化を目指す)に取り組んでいます。当社はこのウラノスとカテナXをつなぐワーキンググループを主導しています。
ルールメイキングから事例を実際に作っていく部分にも、ユーバンスの事業部門が主体的に取り組んでいて、国際標準の面でも強みを強化しています。アジア地域では、こうした動きはまだまだこれからなので、今後の市場として期待しています。
――DXの定義も各社さまざまです。DXについて富士通ではどのように捉えているのでしょうか。
D(デジタル)とX(トランスフォーメーション)のどちらが大事かという話はよくあります。この2つを分けて考えると、デジタル化すること(D)ではなく、トランスフォーメーション、変革すること(X)がDXの本質だと捉えています。例えばデジタルツール導入によるモダナイゼーションだけでは、DXとしては不十分です。
DXによって、企業価値も上げなければなりません。DXが進んでいない一般の企業だと、事業規模が大きくなることによって物質的な経費もかさばり、ビジネスが飽和して頭打ちになりがちです。この点、GAFAなどの企業が売り上げを指数関数的に伸ばせたのは、フィジカルに頼らない収益構造を生み出せたからです。このようにビジネスの構造を変えられるかどうかまでがDXだと、私は考えています。
生成AI活用も積極的に推進
――今後は生成AI活用もユーバンスの課題になるのでしょうか。
AIサービス「コヅチ」を既に積極的に打ち出しています。ユーバンスのDI PaaSと融合したソリューションとして顧客に提供しています。コヅチは既に在庫管理などの需要予測や、画像解析によるセキュリティ向上などで、幾つも成果を出しています。
生成AIでは、コヒアとも戦略的パートナーシップを発表しています。コヒアとは日本語特化のLLM(大規模言語モデル)「Takane(タカネ)」を共同開発し、今後提供していきます。他にも量子コンピュータなど、当社で研究開発を進める次世代の技術がありますので、実用化でき次第、ユーバンスにも取り入れていきます。
――ユーバンスの今後の目標は?
当社の中期計画の中で、2025年度のユーバンス事業の売り上げに7000億円という数値目標を掲げています。当社の主力であるサービスソリューション事業の中で、ユーバンスを事業全体の3割まで伸ばしていく方針です。
SXにおいても、先述のルール作りやエコシステム作りの面でも新しい市場創りに貢献しながら、企業の存在価値を高めていきたいと考えています。
編集部より:12月23日の早朝にNECの記事を公開いたします! お見逃しなく!
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