JALの自動チェックイン機が停止 銀行システム障害との“奇妙な関係”:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
年末年始にかけて、日本のインフラを担う複数の企業がDDoS攻撃を受けた。DDoS攻撃は珍しいものではないが、システム障害が発生すると信用を失う。誰が何の目的で攻撃しているのか。また、被害を最小限に抑えるために、どのような対応が必要なのか。
誰が何のために攻撃しているのか
年末年始に起きたような一般的なDDoS攻撃も、嫌がらせの域を出ないといえる。事実、攻撃者からは金銭の要求もなければ、マルウェア(ウイルスなど悪意あるプログラム)を感染させられたという話もない。要するに目的は「営業妨害」に過ぎないのだ。
「じゃあ誰が何のためにやっているのか?」という話になるのだが、攻撃者は日本のインフラ機能の動きを妨害したい何者か、ということなる。そうするとまず考えられるのは、ハクティビストと呼ばれる「サイバー空間の活動家」だ。ハクティビストとは、ハッカーとアクティビスト(活動家)を足した言葉である。つまり、PCを使う活動家だ。
例えば日本では、かつては政治家が靖国神社を参拝すると、中央省庁のWebサイトが中国の愛国ハッカーなどからDDoS攻撃を受けることが頻繁にあった。
最近では、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後、当時の岸田文雄政権が米国などに同調してロシアを非難し、経済制裁に加わるという言動をとった。それを受けて、ロシア系のハクティビスト集団やサイバー攻撃集団から日本は「反ロシア国家」認定され、DDoS攻撃の対象となっている。
実際にいくつものロシア系集団から攻撃を受けている。例えば「KillNet」「NoName057(16)」といった集団は、日本の数多くの企業や組織に対してDDoS攻撃を仕掛けてきたことで知られている。
加えて、日本は反ロシア的な言動以外でも、DDoS攻撃のターゲットにされている。例えば、福島第一原発事故の処理水の海洋放出に絡んでも、日本は狙われている。また2023年に入管法(出入国管理及び難民認定法)が改正された際にも、難民申請の制限や、退去命令措置の強化などがなされたことで、有名ハクティビスト集団のアノニマスが「私たちは移民法に対して日本政府を標的にし続ける」と宣言している。
ただこうした攻撃も、結局は「デモ行為」に近いもので、大々的な破壊工作などとは違うため、大騒ぎするようなものではない。相手はこちらが大騒ぎすることが目的でもある。そうすれば自分たちのメッセージを広く知らせることができるからだ。筆者が以前、ロシア系集団のDDoS攻撃の情報をXで投稿したら、この集団は筆者の投稿のスクリーンショットをうれしそうに自分のブログに掲載して紹介していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「KADOKAWA」「ニコ動」へのサイバー攻撃、犯人と交渉中の暴露報道は“正しい”ことなのか
KADOKAWAグループのニコニコ動画などがランサムウェア攻撃を受けた事件について、NewsPicksが交渉内容を暴露する記事を出した。交渉中のタイミングで報じることは、企業の判断や行動を制限しかねない。対策にめどが立った段階まで待つべきではないだろうか。
「LINEのセキュリティ」は大問題 TikTokと同じ道をたどるのか
生活に欠かせないLINEを巡って、セキュリティの問題が指摘されている。2023年11月、日本人を含むユーザーの個人情報漏洩事件が発覚。これまでもセキュリティ意識の低さが問題を引き起こしてきた。日韓の企業が出資するLINEに、政府が資本の見直しを求める動きもある。
テレビCMを打ちまくる「Temu」は危険なのか 激安を実現するビジネスモデルとは
中国の激安通販サイト「Temu」が、テレビCMなどに多額の広告費を投入していることで注目されている。独自のサプライチェーンによって低価格を実現しているが、商品のクオリティーの低さが問題視される。個人データが中国に渡る可能性もあり、懸念は大きい。
ようやく制度化「セキュリティ・クリアランス」とは? 民間企業にどう影響するのか
閣議決定されたセキュリティ・クリアランス法案は、民間企業の従業員も無関係ではない。先端技術分野も機密情報となり、情報を扱うための適性評価の対象が民間にも広がるからだ。プライバシーの懸念も出ているが、国の安全と発展のために不可欠な制度だといえる。
なぜイーロン・マスクはトランプに「近づいた」のか 背後にある“ビジネスの賢さ”
米国大統領選挙で再選したトランプ氏を支援する実業家のイーロン・マスク氏。次期政権にも深く関わる狙いは、ビジネスで恩恵を受けることにあるようだ。ビジネスマンでもあるトランプ氏の懐に入り込んだ手法は、ビジネスパーソンにとってヒントになる。
