「社員の自主活動」が成功する会社は何が違う? マイクロソフト、セールスフォースを見てきたWHI社CHROが分析(2/3 ページ)
企業内の「健康イベント」と聞くと、退屈なイメージを持つかもしれないが、Works Human Intelligence社の有志社員によるウォーキングイベント「Connected Walking」には半数以上の社員が参加している。このイベントは会社主導ではなく社員のボランティアで行われている。本記事では「社員の自主活動」を成功させるポイントについて、プロジェクトメンバーと人事責任者に話を聞いた。
人事、CHROの評価は?
人事を統括する立場からはWHPの活動はどう見えているのか、CHROの八幡誠さんに話を聞いた。
八幡さんは2023年9月にWHIのCHROに就任する以前に、日本の製造業の会社を経てマイクロソフト、セールスフォース・ジャパンで人事領域の責任者を務めてきた。その経験から、WHIの社員の健康に対する意識は、一般的な日系企業よりも外資系企業のそれに近いと感じているという。
「外資系は社員の自主性、自律性に任せる部分が大きいので、心身の健康状態を常に100%に保つことも自己責任だという考え方があります。個々にしっかり自己投資をするんですね。一方、日本の会社は健康管理も『会社がやってくれる』という意識が比較的高い。その点WHIは、福利厚生にも力を入れていますが、社員の自律的な取り組みが盛んな会社だと思います」
「もちろん会社としても、労働時間の管理や健康診断とそのフォローアップなど基本的なことに加え、戦略的な健康経営にもロードマップを描いて取り組んでいるところです。ただ、健康は一人ひとりの意識が重要で、特に運動などは会社が『やれ』といってやるものでもないと思うんです。だから『Connected Walking』のようなボトムアップの活動の影響はとても大きいと感じています」(八幡さん)
八幡さんは、『Connected Walking』が個人の運動量を増やすだけでなく社員間のつながりを創出している点も大いに評価する。
「現在、当社は出社が34%、リモートが66%という働き方で、所属部署を超えて雑談するような場面があまりないという声を聞きます。毎月中途入社者がいるのですが、周りの社員と知り合う機会が少ないという状況もあります。『Connected Walking』で社員同士の横のネットワーキングの機会ができたことは非常にありがたいことです。また、役員層と気軽につながれる機会になったという一般社員からの声もあり、コミュニケーションの活性化、エンゲージメント向上にもつながるものだと思います」(八幡さん)
社員の自主活動に歯止めをかけるべきではない
発地さん、齊藤さんに聞いたところ、WHPの週次ミーティングは昼休みに開催することもあれば、午後2時頃から行うこともあるという。業務時間中に別の活動をしても、やるべき仕事をきちんとやっていれば目くじらを立てられることはないのだ。目くじらどころか、八幡さんは社員グループの自主的な活動に対して非常に肯定的だ。
「社内で本業とは別の活動をしている人は、本業のパフォーマンスも高いんですよ。両立するためには本業の方を生産性高くやらなければいけません。それに、何か会社や社会に貢献できるようなことをしたいという人が、社内に同じ志を持つ人たちと活動するというのはモチベーションやエンゲージメントの向上につながり、本業にも良い影響を与えるんです。それに歯止めをかけるのはむしろマイナスでしかありません。活動したい社員がいれば後押しするのは当然だと考えています」(八幡さん)
WHIでは、社員が自主的な活動を行うのに会社の許可を得る必要はない。そのため会社側が全ての活動を把握しているわけではないが、WHP同様に存在感のある社員グループに「UniQorns(ユニコーンズ)」がある。LGBTQ+への理解増進を目的としたコミュニティで、現在は約120人が参加している。
「私がDE&Iの取り組みが非常に進んでいる外資系企業を経験してきたこともあり、WHIでも積極的に取り組みたいと考えてきました。また、当社は人事テックの会社ですので、顧客企業の人事システムにおいてもさまざまなマイノリティーの方たちの存在をきちんと受け入れられるような製品を設計しなくてはいけません。そういった側面でも重要なテーマですので、社員グループの活動を大いにサポートし、一緒に取り組んでいるところです」(八幡さん)
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